高潮した一瞬を切り取る“証人”…「アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生」

Category : ドキュメントDVD
アニー

パンツスタイルのヨーコは言う。
「脱ぎたくはない。服を着たままで撮って。」
アニーは「ええ、いいわよ。そのままでいから、好きにしてて…」
突然ジョンが脱ぎ出して、胎児のようにヨーコにぴったりとくっつく。

あまりにも有名になりすぎたこの一枚は
この何時間か後にジョンが射殺されたというショッキングな事実を
さっ引いても、まさに「名写」である。
弱いジョン、ヨーコをマリアのように慕い、畏敬し、愛するジョン。
ジョン自らがそうさせたのは…やはりアニーである。

ブレッソンに出会い、カメラマンになる決意としたというアニー。
彼女が頭角を表すのには、それほどの時間は要らなかった。
どこへでも、誰にでも、いつでも、どこまでも
アニーはミュージシャンと行動を共にし、やがて
彼らからは“見えない存在”として“認められる”。
透明人間になるための“肝”を充分に備えた人である。
登場するセレブが口を揃えるのは
“自分も知らない自分”を見せてくれたアニーへ賞賛である。
いつ撮られたかわからないというのは、盗撮ではなく
同じ部屋に、同じ時間に居ながらにして気づかせないほどに
入り込んでいるということ。

ローリングストーン誌は二つのものを彼女にもたらした。
一つは世界的名声。
もう一つはヤク中になったこと。
スタッフの反対を押し切ってストーンズのツアーに同行したアニーは
ヤクなしでは仕事ができなくなっていた。
「あの頃はとんでもないバカだった…」こう回想するアニー。

母性か猥褻かで物議をかもした臨月のデミ・ムーア。
何千本ものバラのとげを全て抜いて、撮影に挑んだベット・ミドラー。

アニーを見ていて思うのはあっぱれなまでの、プロとしての仕事人ぶりである。
セレブのすばらしい一瞬の表情を撮るために費やす努力はもちろんだが
それ以上に「人と接する」こと、「人に信頼されること」への
天性の柔軟さと自然な相手への思いが
見事に被写体たる彼らのハートをわしづかみにしてしまうのだ。

サラエボでの撮影で彼女はあることに気づかされる。
戦争という現実、隣家同士が殺し合う現実、結果としての破壊…死。
バーブラ・ストライザンドの撮影を断った。
「バーブラの何を撮ろうが、そんなことは重要なことじゃない」
今、ここにある「現実」を撮らねば…

誤解を恐れずに言えば、巧みに撮るという技術的な部分と
その場を切り取るという感覚的な部分とのマッチングが常に念頭にある
カメラマンという仕事は
仮に、「セレブ」と「戦場」という二極のシーンの中で
どう機能し、変化するのだろう…
どちらもビジネスと言ってしまえば、それまでだが…。

同性愛者のアニーにとっての作家のスーザン・ソンタグとの愛。
50過ぎで、代理出産で生ませた双子の娘…

彼女はタフで優しく、誰からも愛される。
自分の進む道をしっかりとした足取りで歩く。
「仕事とはね、こうするものよ。あなたがアマチュアでなければね…」
そんなアニーの心の声が聞こえた。


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