みんなを敵にまわしても私は平気…「私の嫌いな10の人びと」

Category : 100円本雑読乱読
きらい

著者:中島義道(新潮社)

大方の人が人生の指南本というのは嫌だと思う。
着地点を人から指示されたり、自分の経験談をこれみよがしに語り、
また尊敬する御仁を崇め奉るようなものも嫌いではないか。
大きなお世話である。
この本はいつか紹介したいと思っていたのだが
タイトルを見て引く人も居るんじゃないかと懸念していた。
これはそんな人にならないようにしましょうといった
啓蒙に満ちた本ではない。
或る大学で哲学を教えている先生の
極私的な自論の展開であるかと言えばそうでもない。
この本の装丁は何の変哲もないが
ミソなのはその10の人が羅列されていること。
これを見て「あれ、それっていい人じゃん…」と思わせて
それの“どこが”嫌いなん?という疑問によって
否が応でもページを開かそうという巧みな仕掛けがある。

1. 笑顔の絶えない人
2. 常に感謝の気持ちを忘れない人
3. みんなの喜ぶ顔が見たい人
4. いつも前向きに生きている人
5. 自分の仕事に誇りをもっている人
6. 「けじめ」を大切にする人
7. 喧嘩が起こるとすぐ止めようとする人
8. 物事をはっきり言わない人
9. 「おれ、バカだから」と言う人
10. 「わが人生に悔いはない」と思っている人


どうです。
もしかしたら、みんなあなたの好きな人ではないだろうか。
大らかに人生を語ろうという場には
決してふさわしくない本であることは確かだ。
自分の周囲の人間全てを敵にまわしても毅然とするであろう
スタンスに僕などは半ば羨ましいなとさえ思ってしまう。
読んで行くうちに著者である中島氏の
了見の狭さを指摘する向きもあろうとは思うが
ここまで“日本人の大好きな人間像”を一刀両断に叩き切る思い切りの良さと
一見極論に見えて、読後は考えさせられる本であることも確かなのである。
内容についてはここでは差し控えるが
はっきりしているのは、横並び横睨みジャパンの国の有様と
国民性がこれほど一致していることへの不安である。
そこに気付いていても結局、見事にそのメンタリズム、
いや慣習が反映された行動を様々なシーンで表している己が居る。
これは結果的にスポイルしてしまうことを意味する。
自分“たち”と違う人を徹底的に排除する。
多数の常識が支配する。
中島氏は自分を「反社会的人間」と言う。
では「社会的人間」とは何を指して言うのかということがここには詰まっている。

クリックすればネットで反応は伺い知ることができるが
一つとても印象に残った部分がある。

「はなむけの言葉」が大嫌いなのに学科長にされてしまい
やむなく卒業生に対するはなむけの言葉をかくことになる中島氏。
この機会に「ほんとうのこと」を書こうと決意する。
希望をもって積極的に生きる姿勢に美辞麗句を並べ立てたものではない…。
「つまりこの世は誰でも知っているように、どんなに努力しても
駄目な時は駄目だし、たえず偶然にもてあそばれるし、
人の評価は理不尽であるし、そして最後は死ぬ…こういうことも含めて人生だ、
という当たり前のことをそのまま言いたいだけなのです。
例えば同僚であるN先生の「個性輝く人生の門出に向けて」というものに
「どうせ死んでしまうのですが…」のフレーズをつけることで
私の気持ちがかなり伝わる。

ご卒業ご修了おめでとうございます。どうせ死んでしまうのですが。
みなさんはこの人生の新しい展開にやや不安を抱きつつも、
大きな希望に胸ふくらませていることでしょう、
どうせ死んでしまうのですが…

以下延々とこのフレーズを挟み込むことで
とんでもなく説得力が増すものに化けるのである。
以下、実際に書かれたもの全文である。

「学生諸君に向けて、新しい進路へのヒントないしアドバイスを書けという
依頼であるが、実はとりたて何もないのである。
しばらく生きてみればわかるが、個々の人生はそれぞれ特殊であり、
他人のヒントやアドバイスは何の役にも立たない。
特にこういうところに書き連ねている人生の諸先輩の「きれいごと」は
おみくじほどの役にも立たない。
振り返ってみるに、小学校の卒業式以来、いやというほど「はなむけの言葉」を
聞いてきたが、全て忘れてしまった。
今しみじみ思うのは、その全てが自分にとって何の価値もなかったということ、
なぜか? 言葉を発する者が無難で定型的な(たぶん当人も信じていない)言葉を
羅列しているだけだからである。
そういう言葉は聞く者の身体に突き刺さってこない。
だとすると、せめていくぶんでも本当のことを書かねばならないわけであるが、
私は人生の先輩としてのアドバイスは何も持ち合わせておらず、
ただ私のようになってもらいたくないだけであるから、
こんなことはみんなよくわかっているので、あえて言うまでもない。
これで終わりにしてもいいのだけれど、すべての若い人々に
一つだけ(アドバイスではなくて)心からの「お願い」。
どんな愚かな人生でも、乏しい人生でも、醜い人生でもいい。
死なないでもらいたい。生きてもらいたい。」


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