すべての始まりは終わりの始まりでもある…「バスキアのすべて 」

Category : ドキュメントDVD
バスキア

監督&制作:タムラ・デイビス

亡くなる2年前のバスキア。
一言で表すならなんとチャーミング。
この風格漂うとさえ呼べる面差しの中に
時折見せる子どものようなしぐさや目の動き。
アート界の寵児として君臨していた頃の
奢りを通り越した落ち着きが伺える。
それと“育ちの良さ”。

27クラブといわれるものがある。
勝手に命名したものだと思うが
果たして神はその才能に嫉妬したのか、
それとも彼らは一生分をその年齢でミューズに捧げてしまったのか…。
古いところではロバート・ジョンソンから
ブライアン・ジョーンズ、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、
ジム・モリソン、カート・コバーン、そして先日のエイミー・ワインハウス。
バスキアは厳密にはミュージシャンではないだろうが
バンド「グレイ」としての活動もプロファイルには残っている。

裕福な家で育ったバスキア自身が
父親の業績や資産、名声といったものに正直どういった反応や
考え方をめぐらせていたかはわからないが、
少なくとも“この道”で生きていこうとする抜きん出た逞しさは
黒人としての扱いへの反動や反発に養われたものであったことは確かだと思う。
と同時に、バスキアの持つ“いかがわしさの中にこそある真実”を
その“聡明さ”と“明晰さ”を以て、絵画表現として検証したこと、
また文字をも絵画として認識させ、詩的で壮大なドラマを
カンバスに描き表した業績は
その年齢から察するに不世出の一人として、
間違いなく現代美術史に残る(陳腐な表現!)
天才の成せる仕事としか言いようがない。
興味深いのはバスキアが7歳の時に車にはねられて、
結果、脾(ひ)臓を摘出した際、母親が入院中に送った本が
「グレイの解剖書」だったことである。
7歳に早くも内臓の一部を失った我が子に解剖書を見せる母親、
それがその後の大きなモチーフとなり、
バスキアの潜在的な表現感覚を引き出すきっかけになったことは
バスキア自身が恐怖と正面切って対峙しながら
自分にとってのリアルを自覚したということに他ならない。

「アイツは誰だ?」
そんな噂は尾ひれもつけば、嘘から出た真実ともなる。
架空のキャラクター「SAMO」を作り出し、
詩的ラクガキストとしてアンダーグラウンドで有名になっていくバスキア。
金はないが着々と素地を固め、
自分の絶対的才能を信じる(これは結構しんどいのだが、どこまで信じきるかで
その後の大きな糧を得るか否かにかかっている、そんな気がします)ことで
まるで神の啓示に触れたように華々しいデビューを果たす。

美術界というところはどうころんだってエラそうでうさんくさい。
認めるか、認めないか…誰が?
つまり、とどの詰まり、それは買う人間が居るかいないかということ。
何百ドルから何億ドルという金が入っても使い道がわからずに
預金もせずに部屋中に札が散らばっている光景は
僕にとってはうれしい。
誰か(女性)がバスキアを“管理”することで
なんとか保ってきたこの金銭感覚。
偉大で、そして短命であった画家にとって
こんなにほほえましいことはない(と僕は思っている)。
それでなくともバスキアの周囲には生臭さが充満しているのに
ここにきて金に執着する姿は見たくないもの。
ハイチ出でビルも所有する公認会計士の父親は、
その出自から相当な苦労を重ねてきたに違いあるまい。
才能とそれに見合う収入が得られたことは
間違いを認めないデータ重視の父親の稼業と比べて
なんと自由なことか、と見比べたかも知れない。
しかしあまりにその自由は短かった。
というより何ひとつ自由ではなかったという見方もできる。
一見、仲間と見まごう連中もバスキアにとっては
刹那な時間を共に過ごす輩に他ならぬどころか
彼を追いつめ、苦しめた張本人であったのかも…。

創造者と薬物。
27クラブに入会するにはこの2つについて
免許皆伝でなければならないようだ。
日本では正直まだまだ認知度が低いアーティスト。

でもね、ほら、その辺の個展に行ってごらん、
バスキア好きが沢山居るから…。

スポンサーサイト
58カ国語に翻訳
English
お越しいただきありがとうございます

den

………………………………………
アート・ドキュメント・ブック・
ミュージック・演劇・ダンス・
朗読・時事・ひがみ・そねみ・
やっかみ・おせっかい…
などなどシッタカぶって書きちらかしては
自己嫌悪な日々をゆらゆらと
過ごしております。
「シッタカブリアンの午睡」
「デラシネ光合成」をこのたび一本化。
言いたがり、やりたがり、ノリたがりな
のんのんとしたブログにお越しいただき
ありがとうございます。
………………………………………

ここから、また…
最近の書き散らかし…
こんなこと書いてます
こちらへもどうぞ!