あの五人は、この五人に他ならず…劇団飛び道具「七刑人」

Category : パフォーマンス見聞
七

脚本・演出:大内 卓
5月24日→5月27日【アトリエ劇研】

先日のブログで尊厳死のことを書いてみた。
事と成り行きをまず知ってもらうための説明が長くて
2回に分けようと思ったのだが、
アップした後で、えらいもんテーマにしちまった…と後悔。

「死」は「生」と折った紙の合わせ目にある。
などとご立派な講釈をたれるつもりは毛頭ないが、
崇高な生き方の果てに不本意な死をとげる場合だってある。
いや、死とはすべからず不本意なものなのだ、という
僕たち生者の感覚がこの「七刑人」によって
いかに、再び、強く、深く、呼び起こされたか。

演劇という限られた空間と条件の中で、
僕たちは「そこ」を見て、「あの」場所に居て、
「その」言葉を聞いて、小さく震えるのだ。

劇団名は知っていたけれど、見た事がなかった。
ただ少なくともワークショップでお世話になったり、
俳優のお一人と一緒にダンスをしたりしたことで、
僕にとって近しい存在になったのは確かだ。
そして旗揚げ十五年の“いぶされた”味わいを
この作品で体感できたことが何よりうれしく楽しかった。

レオニード・アンドレーエフ「七死刑囚物語」が原作だが、
「帝政ロシア時代の圧政に苦しむ人々の苦悩」といった筋書きは
ここには無い。
結果として大臣の暗殺に失敗した五人が死刑を宣告され、
牢獄で三日後の処刑を待つシーン、
処刑場のある土地まで乗る汽車内のシーン、
処刑場へ自らが行くシーンの3つから構成されている。
そして主人殺しや強盗で同じく死刑となる二人の男が
この政治犯と一緒の運命を辿る。
この客演のお二人がまたいい。
柳原さんは(不本意だと思われるが)C.T.T.で拝見して以来
忘れられない俳優さんである。
金さんがまたミーハー的にだが、おそろしくカッコいいのだ。
五人が共通意識として、強い信念として実行した
ミッションと比べて
この二人の愚行は大きな隔たりがあるように思えるが、
しかし“結果的”に絞首刑という手法をして
死に臨むことに何ら変わりはない。
彼らの「抗えない死」というものとの向き合い方は
確かに五人と比べて実にバタ臭い。
しかし狂気じみた行動や信じ難い言動といった
人情として多少は期待するエキセントリックなキャラクターでもなかった。
これにはちょっと驚いた。
観客をこれでもか、と両腕をつかんで舞台の世界へ
思い切り引き込むような(原作を読んでいないのでわからないのだが)
そんな“下品”な演出はされていない。
むしろ、死への覚悟が七人のそれぞれに
それぞれの温度で静かに温まっているようなのだ。
前にも書いたことがあったが
元々「生き様」なんて言い方は「死に様」から出来たと聞いた。
乱暴な言い方を許してもらえれば、
この七人はそれぞれが“身の丈の死に方”を受け入れているのではないか。
もちろん時代背景から考察すれば
(いつの世でもだが)「矛盾と格差」が
この七人が犯罪者に至る共通した動機であったことは否めないだろう。
しかし話はそこにも触れず、
政治犯たちの“崇高な意志”をこれみよがしに正当化することさえしない。
だからこそ、この話が観客の中に時間の経過と共に
染み込んでいくのだ。

獄中シーンの徹底したシンプルな舞台設定は
まるで出演者そのものがオブジェになったように見えた。
各人が居る牢獄の向きや匂いまでもが
そこに立っているのである。
車中シーンも見事だった。
僕たちは走る汽車と同じ速度で彼らと共に
残酷な結末へ向かう時間を過ごす。

獄中でそれぞれの思いに重い蓋をするひと時。
その蓋がカタカタとズレ始める時。
嗚咽をこらえて心の口に手をあてがう時。
特にウェルネル(堀 貴雄)は悲しいほどに
落ち着き払って皆の破壊を食い止めているようにも見える。
抑えた演技が一層、蓋の間から苦しみを沁み出させる。

この五人の死刑囚、それが同時に
「飛び道具」として各人が共有し、共同する強い演劇欲による
結びつきにもダブってしまうのは僕だけだろうか。

物語は実に静かに終息する。
しかし僕の中では「……」が残る。
演劇を見終わった時の「……」は大切にお持ち帰りにしてもらって
こうして小出しにしながら楽しむ。
…いい劇団です。



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