「 バカのカベ 〜フランス風〜」加藤健一事務所

Category : パフォーマンス見聞
バカのカベ

2012年12月23日【府民ホール アルティ】

1999年に上映された「奇人たちの晩餐会」の舞台版。
なぜに邦題を「バカのカベ」にしたのか。
「何をもって人をバカと判断するのか、その基準が難しいんじゃないでしょうかね」
これは芝居の冒頭に登場する医師のセリフだが、
僕には「バカのカベ〜フランス風〜」 とした理由が
認知度の高い「バカの壁」をするりと飲み込ませた様な気がして
なんだか“らしからぬ”あざとさというものを感じてしまう。
タイトルにまんまとだまされた感がある。
バカバカと言ってると、ゲシュタルト崩壊ではないが
バカが何たるか、その概念が逆に薄らいでバカの本体が見えなくなってしまう。
(のは僕だけか…)

ここに出て来るバカ(と呼ばれる)は疑うことを知らない、至ってマジメな男である。
要領の悪いヤツをバカ呼ばわりするなら、大なり小なり人間は皆バカである。
じゃあバカの反対は何かと問えば、それは他人をバカと断定したその人だ。
それほど利口ではないにせよ、そんなにバカじゃない。
誰しもが思っているのはズバリこれではなかろうか。
毎週火曜日の晩餐会にバカを呼んでバカ呼ばわりするなんてのは
確かに趣味が悪いがネタとしては芝居には打ってつけなのかも知れない。
しかしこの舞台をみる限りにおいてはあまりに「笑い」の質が古臭いのと
古き良きフランス(だと思う)の時代設定が甘くて、バカの切迫感が薄くて、
何よりもコメディとしての賞味期限を過ぎてしまっている感が否めない。
内容はネットで調べてもらうとして、
要は30年ぶりにつかこうへい事務所の重鎮が共演するという話題、
これで全部。(ちょっと言い過ぎたかも…)
僕が最初に加藤健一事務所の舞台を見たのは
42回目の演目である「ザ・フォリナー」だった。
その時は文字通り腹がよじれるほど笑い、涙目になった記憶がある。
ところが隣の席もその向こうもそれほどには笑っていない。
今回、お隣の名古屋から観に来られた方は肩を震わせ、身をよじって
大いに笑っておられたが、視界に入る大げさなウケ方に却ってこちらが
シラケてしまうほどだった。
「ああ、あの時の自分はこれだったのかも…」
生身の舞台というシチュエーションでの体験が「笑い」に付加価値を付けてしまったのだ。
このノンキな笑いは明らかに「中年壮年」以降のものだ。
その証拠に観客に20代はほとんど居なかった。
概ね50から60代といったところ。

共演の風間杜夫にさほどの興味はなかったが、加藤との掛け合いを期待した。
FBにも書いたコメントだが、素晴らしくプロのお仕事、である。
だからこれほどに“引っかかり”のない内容(だから)を
あっと言う間に流れるが如く見せる役者(演技)力はたいしたものである。
が、いかんせん話に魅力がない。
脚本として原作を下敷きにしてもっと現代風にすべきだったと思う。
もっと政治的な、いや宗教でもいい、舞台にタブーなんて存在しないのなら
もっと辛辣で哀しい「バカ呼ばわり」を見たかった。
つまり「ユルい」のだ。
なんだかみんながエキセントリックで、それゆえに相殺してしまっている。
もっと冷たいコメディに仕立て直す方法がなかったものか。
脇を固める役者も実にそつがなく、しかし誰一人として“自分に換置”できない。
特に後半に登場する査察官はいただけない。
ただただ彼だけが尚更に寒かった。

いつも思うのは舞台はカーテンコールと共に
特殊な、そこでしか味わえない独特な感慨を心みやげに持ち帰る楽しさがある。
終ってしまえば、ハイそれまでよ、ではあまりに寂しい。
設定は確かに古いのだが、もっと自由に現代世相も盛り込んで
不景気で殺伐とした暮らしぶりに何か面白いことはないか、と
一計を案じたこれまた傾いた出版社のオーナーが…といったくだりでも
面白かったんじゃないか。
翻訳劇ばかり手掛ける加藤健一事務所は、ある意味「面白い材料、原作」を
探してナンボという縛りを宿命的に持たざる得ない劇団だと思う。
さて85回目となる次回はこれまた芸達者な戸田恵子との共演である。
惜しむらくは前回の「シュペリオール・ドーナツ」が観られなかったこと、かな。

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