「国道、業火、背高泡立草」烏丸ストロークロック

Category : パフォーマンス見聞
国道、業火…

伊丹公演/2013.3.22→3.24【AI・HALL】

脚本・演出:柳沼 昭徳  音楽:山崎 昭典、中川 裕貴
出演:阪本 麻紀、桑折 規、崎田ゆかり、澤村 一間、柏木 俊彦(第0楽章)、今井 美佐穂(第0楽章)

柳沼さんは厳密に言えば僕と同業ではないけれど、広告や編集の仕事にも携わっていたから、
なにぶんデザイン、ことにタイポグラフィにはうるさい。
自身の世界観、いや“劇観”とも呼べるものを平面で視覚化するためには決して妥協を許さない。
劇空間とは確かに目の前の舞台装置によって巧みに企てられる要素が少なくない。
しかし何も見ていない“これからの”観客が目にするフライヤーに対して
これほど“手を抜かない”演出家も珍しいと思う。
初めてフライヤーを手にする時、もうそこに烏丸ならではの手応えがある。
観劇後、電車に揺られながら余韻を胸に、再びフライヤーを取り出して見る。
「国道、業火、背高泡立草」。
僕もかつてはデザイナーの端くれだったからこのタイポグラフィに至る
経過というものが何となくわかる。
やはり丁寧に作られたものは大小に関係なくしっかりと座っている。

彼らが降り立つのは実際は駅であるが、駅とは目的地であり、またターミナルである。
しかし国道となるとそこに突然、刹那が匂ってくる。
うらぶれた街を走る国道はすでに通過のためのプロセスにしか過ぎない。
一瞬にして通り過ぎる街などに誰も目もくれない。
設定を国道9号線としているところなど僕には感涙ものだ。
かつて10代の頃に何度この道を往来したものだろう。
それも親指をあげて…。
日本で一番長い国道、9号線。
こんな街がいくつあったって何もおかしくないほどにこの道は長くて、
その長さゆえに当時デラシネを気取っていた僕は
助手席で揺られながら妄想、空想、奇想を巡らしながら、
ほとんど夢しか見てこなかったような気もする。

生まれ育った街に、20年後に帰ってきた男。
泊るところさえない街のひなびたスナックに立ち寄ってみると、
彼の素性はあっけなく底抜けに開示されてしまい、かつてのトラウマを道連れに、
いやトラウマを見事に札束に替えて、彼はささやかな凱旋を果たす。
語り草となっている街での火事の疑いをかけられ、
街を放り出された「ビンボーのユーキチ」。
彼のモノローグは延々と累々と続いていく。
この国道沿いの「街という名のムラ」に舞い戻ってきた彼が果たす見事なまでに
綿密な企み。
それは金でモノ言わさぬ復讐だったのか。

柳沼さんが書く物語には、
つけ込み、狡猾、底意地の悪さ、妬み、嫉み、やっかみ、とっぽさ…などなどが
それぞれ使い倒したチューブをさらにひねってつぶして出すように、
しぼった雑巾をさらに絞るような、ひりつく痛みを伴って
様々なシーンに滲み出てくる。
舞台の輪郭とでも言える廻廊。
そこをトランクを引いて歩く男。
モノには限りがあり、計画には終わりがある。
まるで時間の螺旋を堂々巡りしながらも、どこかで終るはずであることを
知っている男。
変わりゆく自分と変わらないように見える街。
招かれざる客、呼んだ覚えのない彼だけが革靴を履き、他は誰もが裸足である。
靴は移動するためのツールとして必須だ。
“そこから動かない”彼らが裸足なのは冒頭からして象徴的だった。

柳沼さんの作品にとてもローカリズムを感じるのは僕だけか。
生まれ育った土地や関わってきた人々への、なんというか…サウダージっていうのかな。
しかし反面、悔やみや恨みも過去と一緒にまとわりついてくる。
地方のムラ的つながりとクモの巣のような人情。

導入も終り方も鮮烈。
欲としがらみと策と金。
途中、柳沼さんらしからぬ連呼して踊るシーンもあったりして、
ああ、これもシニカルに笑える。
膨大なセリフをセリフに引っ張られることなく等身大で語る主人公には感服。
達者な役者さんたちと舞台環境の素晴らしさと音楽、話の流れの面白さが
上へうねっていくスパイラルのようにこの舞台を作り上げた。
皆さん、ありがとうございました。


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