劇研アクターズラボ+あごうさとし「 最後のコント 」

Category : パフォーマンス見聞
最後のコント

劇研アクターズラボ+あごうさとし「背泳ぎの亀」第一回公演
2014.8.8〜8.10(4回公演)【アトリエ劇研】
作・演出:あごうさとし
出演:衣川茉李|伊原敬子|渋谷勇気|本庄かや子
   山野博生|板倉真弓|矢田部恵子|松村尚樹|近江就成

比喩の距離について考えてみたりします。
観客は話の展開をセリフや俳優の動きによって知らされ、
それらを組み立てて、組み合わせながら進行を
客席という暗闇からじっと凝視します。
その日は二日連続の夜勤明けでした。
2時間という睡眠によって引き起こされる、
当然の成り行きとして睡魔。
これをどうこう言うのではなく、
たっぷりと眠っていても、さらに眠たくなる演劇というのが
もし、あったとしたら(関係者には失礼を承知で言うのですが)
それは僕にとって、そういう演劇であったと理解します。
この舞台の帰り道にそのことばかり考えていました。
勿論、相性といったものもありますが。

最初の「比喩の距離」というのは
演出家なり脚本家がその話をどう反映させたいのか、
つまり観客の心にどういった化学反応を起こさせたいのかという目論み。
演出家は自分の舞台の観客にはなれない。
どこまでも観客としての“想定”を踏むしかないのです。
というのは演劇人としてプロとして舞台芸術というものを
数々の経験から理解していたとしても、
そしてまた希望的観測のもとにお披露目しても
隣のオバちゃんのこの舞台への反応を予測することは
極めて難しいのではないか、ということです。
まぁ、当たり前と言えば当たり前ですが…

ここはシェルターです。
9人の白い防護服に身を包んだ役者が一気に
なだれこむようにして現れると
“ただならぬ様相”の割にはユルい会話が続き、
そのうちに、彼らの共有している“ミッション”ともいうべき行為が
徐々につまびらかになります。
なぜここに彼らがいるのかを最後まで明らかにしないのは
(どういった災厄かという)
彼らの現状を想像させるだけの
危機的実態が現在の日本に見え隠れしているということと
大いに関係があると思います。
あごうさんの舞台は初めてなのですが、
劇研アクターズラボとしての最初の作品であるこの「最後のコント」は
会話劇的な進行のなか、顔しか見えない防護服という“制服”によって
役者の特性のようなものがなおさらに際立つという効果も見てとれました。
(相当に発汗作用も促されたことでしょう。念の入ったことにゴム製のグローブまでして
これは正直大変だったと思います)

彼らはここで生きて行くための糧として毎日コントを作り、
毎月相方を替えながら(コンビが3組、トリオが一組)互いに披露しあうという
もはや暗黙のルールであるがごとくの
それ自体に決して疑いは持ってはならじという空気の中で
この苦境を乗り越えようとします。
(が、切実さという点においては同情や憐憫といった要素は“最初は”抑えてあり、
あくまで楽観的で、まるでキャンプのようです)
しかし一人のメンバーの発言、つまり「義務的なコント作り」への否定意見が
彼らの中にひとしずく落ち、やがて大きな波紋となって
結果的に全員がコント生活をヤメるという事態にまで行きついてしまいます。
コント作りが(コント、というのが正にコントなのですが)
ミッションであるという強制に多分に全員がそれとはなしに苦痛を伴っていたはずですが、
「笑かす」という目的以外にここでは何も価値を持ち得ないコントを
毎日作り続けるということ、そのものへの疑問は
もしかしたら昨今の日本の世情を見聞きするなかで
或る種の比喩でもあるのかな、と素人ながら勘ぐってしまいました。
疑問を持つことを許されないこと、暗黙のタブーへの反逆に
何がしかの共感を持つのかも知れません。
9人分、50年分の食糧は確保できているシェルターですが
「わたしだって恋をしたいし、子どもだって欲しい!」と訴えた
(むしろカミングアウトに近い)女性の叫びや
一番若い十代の青年の「結局、僕が皆さんを見送るわけです」といった
確証めいた発言に、単なる義務への反抗に留まらない
生存への不確実性というものの暗澹たる空気に
やがてシェルター全体が包まれていきます。
先の見えない絶望感や虚無感といったものが
しかし悪くはない後味を残しつつ、
役者たちが一人、また一人去っていく舞台の上をひたひたと這っていました。
あごうさんの作品を見るのは失礼ながら、これが最初でしたが
「ああ、こういう作品を作るんだ」といった
(「あごう純正」ではないとは思いますが)テイストを知る上で
とても面白く見させていただきました。
結果、夜勤明けの頭にも目にも、素敵かつ心良い刺激となり、
やんわりとではなく、それほどに集中して物語に入る事ができました。
あごうさん、面白いです。



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