生きるために磨かれた音楽…「ジプシーキャラバン」

Category : ドキュメントDVD
ジプシー

冒頭のインドの少年らによる演奏。
まず、掴みはOK。
ミュージシャンの卵たちのクオリティの高さに度肝を抜かれる。
「ジプシーキャラバン」と銘打ったアメリカ縦断ツアーのドキュメンタリー。
6週間という長きにわたるツアーへの参加は4カ国5バンド。
そもそも「ジプシー」とは誰なのか?
現在では「ロマ」という呼称が一般的になっているが
それはジプシーという「言われ方」に差別意識が含まれていることによるものからと
元々の意味から変化して(悪い方へ)しまったからという理由のようだ。

ある方の著作の要約であるが 中世封建制が終わり、
近代社会が発展していく中で 資本主義的生産関係を基礎とした国民国家が形成される。
その価値観は
1.キリスト教徒であること 
2.定住であること 
3.勤勉に働くこと、であった。
近代資本主義社会には常に「ある種の隙間」があって、
落伍者の烙印を押され、排除された人間集団が発生する。
(多分にそれは非教育的環境にいた人たちとも言えよう……den)
しかし、このような隙間で地域社会にさまざまな「サービス」を提供することで
彼らが容認されてきた事実と歴史がある。
こうして、今日見られる「ジプシー」と呼ばれる人間集団が
近代ヨーロッパ社会に広く形成され、再生産されてきた、という。
従って彼らは、歴史や文化、さらには出自を共通にする「ひとつの民族」というよりも、
各国の歴史のなかで形成されて、
その過程でいくつかの特徴を共有するにいたった
多様な人間集団と考えたほうが適切なのではないか。
が、トラックやテントで生活しているとか、
遊牧民のように、あちこちへ移動するとかの
従来のジプシー概念のようなものをひっくり返すには至らない。
やはり謎めいた部分が多い“彼ら”である。
ツアー参加の4カ国とバンドは
スペインはアントニオ・ビバ・フラメンコ・アンサンブル、
ルーマニアはタラフ・ハイドゥークスとファンファーラ・チョクリーア、
マケドニアはエスマ、
そしてロマのルーツと言われるインドからはマハラジャである。
この5つのバンドが縦断バスに乗ってニューヨークからサンフランシスコまでの
ツアーに出るわけだが、何しろ連中の仲の良い事この上ない。
ミュージシャン独特の「ノリ」とロマの「共有意識」が 肌の色や文化を越えて、
ひとつの「ロマ・ミュージック」を創り上げるのだ。
インド音楽とフラメンコの共演、
そこへ文字通りジプシークイーンと讃えられるエスマが加わり、
ルーマニアのバンドが絡む。
単体でステージに上がる時の自分たち独自の音楽の主張から
セッションでの不思議なグルーヴの重なりが圧巻である。
僕の中での脈絡のない別々だと思っていた音楽形態が
長い迫害の歴史の中で、社会での身の置き所を音楽に求め、
子孫に伝える彼らの 中では、実はなんら違和感のないものだったのだ。
お互いの音楽スタイルを認め合い(しかしステージでのフィナーレの曲目や段取りには
大いに互いにモメていた…これもまた良し)
前へ進もうとする力は 有り体に言う「音楽には国境は無い」ではなく
「この世の音楽は全てロマからの影響を受けたもの」と断言するメンバーの
強い誇りと熱いまなざしに裏打ちされている。
ルーマニアのミュージシャンなどはCDの売り上げで
自分たちの村に電気をひいた「偉い人たち」なのである。
ショックなのは欧米では、
やはりジプシーは「アブナい奴ら」「コワい奴」「盗人」というレッテルが
貼られているという事実。
メンバーの一人が宿泊したホテルの勤務簿を拝借して
書かれたフロントのコメントを読み上げる。
「目つきの悪い奴らがたむろしている。気持ち悪い奴らだ。気をつけろ」
ルーマニアの女王、エスマが言う。
「ロマは戦争を始めたことも、国を占領したことも、人々を迫害したこともない。
しかし長い間不当な扱いを受けてきた」
また、あるメンバーは
「迫害された復讐は子供たちに充分な教育を与えることに向ける」と。

画質の荒さやカメラワークのぞんざいさなど、
欠点をあげつらった 映像作品としての評価にはこの際、目をふさいでもらおう。
その分、耳をダンボにして、
この素晴らしきルーツ・ミュージックの旅を存分に楽しんで欲しい。
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