「 谷原 菜摘子 〜 Black is the Colour」

Category : 現代美術シッタカぶり
2015.03.03〜03.14【 galerie 16 】

谷原さんの個展を見た晩、妙な夢を見ました。
僕は夢についてはいつも殆ど記憶がないに等しいのですが
今回は仕事に絡んだものだった(疲れ?)ので鮮明に覚えています。
老人施設での認知症の症状のある利用者の方が
キッチンにあった日本酒一升瓶を丸ごと呑んでしまったというもので
僕は翌日は休みだったので(ということは夜勤の設定)
朝に帰ってから、いつもの通りギャラリー巡りの予定を立てていたら
突然家に連絡があり、朝方に部屋を覗いたら、その利用者が
急性アルコール中毒で亡くなったというものでした。
ある部分では現実で有り得ない話ではないのですが、
問題は結局何の進捗もみられないまま一人の死が
闇に葬られてしまったことで、
どうにも嫌な気持ちで悶々と朝を迎えたことを記憶しています。

P3060052.jpg

さて、タイミング的にこの内容はどうかとも思いますが
谷原さんはご自身の夢が創作の源です。
それも毎晩のように見る悪夢です。
このダークサイドに位置する悪夢(=不安・恐怖)を
隠すべき暗澹たるイメージ(=封印)としてではなく
自らの創作者としての出自とするスタンスは実に明快で
ギャラリーに出向いて作品の前に立つと
作家である谷原さんが、かなりしっかりとはっきりと
それぞれの作品の制作趣意を話してくれました。
丁寧な言葉遣いとハキハキした喋り方のこのような若い人に
久しぶりに(というよりもあまりない…)お会いしたので
正直驚きを禁じえませんでした。
プレゼンについて「鍛えられている」のかとも思いましたが
ことにこういうテーマで制作されていることへの
向き合い方の問題なのかなとも思いました。
京都市立芸術大学の卒展時の出品作品の強烈な
挑むような作風はかなり印象に残り、
あえてアップはせずに今回の個展をブログとしてレビューした次第です。

谷原さんチョイスしたもので明らかに他の作品と異なるもの、
それが支持体であるベルベットです。
幼少の頃の「紙+パステル」という描き味、手触りのようなものが
感覚的に体に残っているという記述が新聞にありました。
谷原さんは入学時は日本画専攻でしたが
2回生時に油画へ転向しています。
しかし和紙もキャンバスにも壁を感じていたということで
やはりこのあたりに「確かな手応え」を真摯に求めていたという
谷原さんの苦悩が見てとれます。
バルベットに出会ってすぐにその質感に惹かれたとあります。
確かにベルベットの生地の毛羽立ちと
筆との相性は決して良いとは言えないでしょう。
だからこそでしょうか、
「汝、如何にして其の罪を償わん」という作品に登場する
獣(これは家族の化身)が着ている装束の質感に
ゾッとするほどのリアルさといかにこのディテールを出すために
(何本もの極細の面相筆をつぶして)挑んだかがわかります。
どの作品にも感じる共通項として「執着」と「変容」
そして作者自身のアーティストとしての「深い位置での受容」が
あります(とシッタカぶってみます)
悪夢が描かせる、というと何か世紀末的な香りがしますが、
谷原さんの作品に登場する人間たち(悪夢によるメタモルフォシス=変態)は
とても魅力的で僕にはデカダンな印象はありません。
つまり享楽的世界とは一線を画した
もっと切実な自己表現の一端に「悪夢」があるわけで
現世を見てみれば悪夢以上の
(まだ悪夢の方が説明できるかも知れません)不穏な出来事が
日々の新聞を賑わせているのが現状です。
不条理な殺人、狂信者たちによるジェノサイド、
見放されたとしかいいようのない自然現象の数々、
過去にどれだけ経験しようとこれらの元を絶つことは不可能です。
そういった「小説より奇なり」な日常で目にする所業が
悪夢の根源であるかも知れません。
何を描いたのか、何を表したのか、何を訴えるのか、
このどれにも、あえて答えを出さない作品がある中で
誤解を承知で言えば「骨のある絵描き」さんの登場に
この先に大いなる楽しみが待っているようです。
「キャンバスである必要はない」と言う教授との出会いが
そのまま“悪夢という呪縛”の中で、なおかつ
決して通例に倣(なら)わない絵画手法に出会ったということで
一挙にここで華開いた感じでしょうか。
第7回 絹谷幸二賞を受賞された谷原さんは
「受賞にも浮かれない」との新聞記事が
当然のように思えるキリッとした眼差しが素敵な
作家としての決意表明に溢れた人でした。

P3060049.jpg

P3060050.jpg

P3060053.jpg

P3060056.jpg

P3060057.jpg

P3060055.jpg

P3060058.jpg






スポンサーサイト

Comment

非公開コメント

58カ国語に翻訳
English
お越しいただきありがとうございます

den

………………………………………
アート・ドキュメント・ブック・
ミュージック・演劇・ダンス・
朗読・時事・ひがみ・そねみ・
やっかみ・おせっかい…
などなどシッタカぶって書きちらかしては
自己嫌悪な日々をゆらゆらと
過ごしております。
「シッタカブリアンの午睡」
「デラシネ光合成」をこのたび一本化。
言いたがり、やりたがり、ノリたがりな
のんのんとしたブログにお越しいただき
ありがとうございます。
………………………………………

ここから、また…
最近の書き散らかし…
こんなこと書いてます
こちらへもどうぞ!