表面的な差異など些細なこと…「アウェイク・ザイオン」

Category : ドキュメントDVD
ザイオン

マスティヤフというレゲエ・ミュージシャンのジャケットを見た時の違和感。
アメリカ人正統派ユダヤ教徒であり、
ハンディーム派のスーパースターである彼のいで立ちは
黒い帽子をかぶり、長いあごヒゲ。
レゲエ・ミュージックとこの外見とのギャップ…
14歳のころにレゲエに出会い、導かれるようにDJになったという。
このフィルムにも重要な立ち位置で登場する。
いや、彼こそ、マスティヤフの存在こそが、
このフィルムのテーマを具現したものかも知れない。

ユダヤ系アメリカ人の女性映像作家モニカ・ヘイムは
熱烈なレゲエファンである。
彼女はある時、このレゲエ・ミュージックのメッセージに
自分自身が長い間慣れ親しんでいるユダヤ教の聖典である旧約聖書の内容と
歌われる歌詞にある共通性を見つける。
ニューヨークのラスタ・コミュニティと近しくなっていく中で
ジャマイカで生まれたラスタファリズムへの探求を強め
首都キングストンへ旅立つ。
確かに日本人である僕には理解に遠い「伝説」や「教条」は
すんなりとは吸収できなかった。
ラスタカラーやドレッドヘアーについてはともかくも
音楽の一ジャンルとしてのレゲエが大好きな僕にとって
やはり「レゲエ聴き」の通過儀礼として
ラスタファリズムのさわりだけでも知る必要はある。

1930年にジャマイカ生まれのマーカス・ガーヴェイがアメリカに渡り
アフリカの解放を訴え、黒人は皆アフリカへ帰ることを奨励。
「王子がエジプトから現れ、エチオピアはやがてその手を神に差しのべる」という
アフリカの王の出現を予言した。
近代になっても植民地化されなかったエチオピアこそが黒人の魂の故郷だという
エチオピアニズムに基づくものである。
後にハイレ・セラシエ1世がエチオピアの皇帝に即位し、
ガーヴェイの予言は現実のものになった。
ここからラスタファリズムが生まれ、当然弾圧も受けることとなる。
真のイスラエルの民こそラスタであり、
現在のユダヤ人はそうではないと言う彼ら。
イスラエルの王であったダビデ、その子のソロモン…
エチオピアの王ハイレ・セラシエはその末裔だからである、と説く。
ちなみにラスタファリの語源はハイレ・セラシエの即位以前の名前
ラス・タファリ・マッコウネンが由来である。
様々な人と会い、辿っていくうちに驚きべき事実が解明される…とはならない。
白い人と黒い人が何かで結びつくわけではない。
それより現実の、もっと言えば現世の自分たちがどう捉え、
どう生き、どう伝えるかが問題であるからで
イスラエルに住むユダヤ教徒は白い肌で
ジャマイカに住むラスタファリアンが黒い肌であるということなど どうでも良く、
重要なのは ささやかな事件ではあるが、
モニカが祖母に初めてレゲエを聴かせた時の彼女のリアクションなのだ。
彼女は最初怪訝そうにヘッドフォンからのイントロに耳を傾け、
やがて手を打ってノリだす。
「良かった?」と尋ねると「歌詞が好き」と答え、
すでにデュエットしてしまっている。
これこそが素晴らしきシンクロニシティだ。
事実、エルサレムではレゲエが想像以上に支持されている。
ユダヤ教の教えが歌詞に描かれているからである。

ドレッドヘアーはラスタの教条によれば
「苦行者となる誓いを立てている間は頭にカミソリを当ててはならない」
正統派ユダヤ教徒もヒゲを伸ばし、もみあげも伸ばしている。
聖典によれば「頭部の端を切り落とすべからず」とある。
つまり髪は切るなということだ。

何か決定的な“オチ”を期待すると肩すかしを食うかも知れない。
しかし、ある信仰が不思議な接点を持って
レゲエという唯一無比の素晴らしい音楽を生み出し
ラスタファリアンと正統派ユダヤ教徒を結ぶ 架け橋になっていることは間違いない。
あるラスタマンが言う。
「世界中の人間なんて表面的な差異よりも むしろ共通点の方がが多いもんさ」

余談だが大好きなR&Bシンガー、ローリン・ヒルの
息子(父親はボブ・マーリィの息子)の名は ZION(ザイオン=天国)である。
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