「 酒井 遙 個展 ~ 吊革の森 」

Category : 現代美術シッタカぶり
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2016.01.16~2016.01.24【 gallery morning 】

小学校5年の時に住まいだけ埼玉県浦和に越して以来、店と小学校のある赤羽との往復でした。当時は定期券を持っていることのスペシャリティってのがあって、ちょっと自慢でした、が、それはそう思わなくては気持ちとしてやってらんなかったというのがあります。さて、この「吊革の森」、タイトル秀逸。酒井さんは大阪の美術高校の先生をしています。高校から現役で大学入学、大学院入学、教師、とストレートすぎるほど「この世界」に関わりながら、現在は美術を教えているということで、見た感じ、インターバル、というのが感じられないんですね。「空白」とか「虚脱」とか「モラトリアム」な時期というのは、常に或る程度の相応なスパンで語られるものですが、僕の印象としては、酒井さんの歴史の中で、そういう「とんでもないムダ」な時間が見えないという感じなんですね。でもFBのタイムラインに年始と個展の挨拶がアップされていて読んでみると中々にモヤモヤとしている様子も伺えます。先の電車通学のエピソードは僕にとっては越境という特殊性の中でかかる時間のストレスを消化していた部分はあります。酒井さんは日々の(しんどい)通勤について、ステートメントでこう表現しています。一節を紹介すると「吊革の森へ、私は旅に出る 私は私を失うための旅に出る そしてまた私は私を取り戻すための旅に出る それを何度も繰り返す(中略)大切な迷子の時間」こういう風に感じられることが実はとても大切なのです。通勤や職場でのストレスをとても正直に、かつ画家としての方法で観察し、カンヴァスに落としていきます。それは「澱の絵具」のようなものかも知れないし、自ら描くということでカタルシスを感じているのかも知れません。カーブのたびに同じ角度で同じ振幅で揺れる多くの吊革に、もしかしたら「烏合(うごう)」を見たかも知れないし、同時に切なさ、空しさを覚えながら、ふと、気付かされるシーンに出くわしたかも知れません、全く同じ日は無いのです。同じように見えながらも、ルーティンのように思いながらも、時間は様々な角度を見せながら、そこそこにヴァリエーションを提供してくれるものです。絵も描き方も展示も、とても奇妙です。でもこれらの作品を見ていて、作家としての酒井さんにとって「迷子」であることの一瞬が、実は創作を大きく促し、支えているのかも知れないな、と感じました。吊革につかまって同じように揺れている人たちのそれぞれの思惑が淡い粒子となって空中に漂う時、それが垣間見えた時、人生まんざらでもない、なんて思えるのではないでしょうか。今日の普通が、明日へ繋がる。そう続くことを「生きる」と称するならば。あれ、絵のこと、何にも書いてませんね…それもまた…では、さて、見にまいりましょうか…

【追伸として】全然絵のことについて書いてないやんか!のお叱りの声こそありませんが、実はとっても素敵でメランコリックです。あくまで私感です。画面の遠近の妙というか、何を主体として見るかでちょっと絵が違って見えたりするんですね。絵を邪魔するものを先にビュッと描く。スピーディーなラインの内側に、さて、いろんな要素が見え隠れしています。ご自分の経験が如実にあって、そこに酒井さんの生活と、それにともなう様々なしがらみと良くも悪くもストレスが描かれています。吊革を擬人化するのは日々、職場まで辿り着く困憊の肉体と精神に見えた幻視かも知れませんね。生絵をいきなり画鋲で留めてしまうあたりの大胆さにもドキリとします。等身大で絵を描く事は向き合わなきゃいけない、つまり嫌な部分を凝視しなきゃいけないこともあるわけで、そんなところに「教育者」としての酒井さんのジレンマのようなものも伺えます。

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