男の色気に満ちたゴロツキ…「CAPA in Love and War」

Category : ドキュメントDVD
キャパ

写真家集団マグナムの三銃士のひとり、アンリ・カルティエ・ブレッソン。
ブレッソンは裕福な家庭環境への反発心から出発した。
その彼がキャパを称して言う。
「キャパはね、ゴロツキさ」
しかし、その語りからは盟友キャパに対しての
大きな愛とちょっとだけの“ジェラシー”も感じ取れる。

キャパがある所で突出、あるいは特徴的なのは
その政治意識と民族意識、
そして「守らねばならぬもの」の大きさを実感しているということ。
当時、オーストリアの「属国」としてのかよわきハンガリーに生まれ、
支配されることへの屈辱を痛いほど知っているキャパは
ジャーナリズムになるために学校へ通う。
言葉でファシズムと戦うと決めたからである。
結果的にエヴァという女性が彼をカメラの道に引き入れた恰好にはなったが、
手に持つものが「ペン」でなく「カメラ」だったということ。
僕はそう思う。

演説中のトロツキーを撮った写真で、18歳で成功を納め、
その後、業界で名を馳せることになる“若造”は、とても態度がデカかった。
しかし、この“デカ”さと“奔放さ”がキャパの魅力なのだ。
そして決定的なのは“命しらず”であること。
キャパを形成している最も重要な要素のひとつではないか。
もうひとつが約10年にも及ぶファシズムとの戦いだ。
10カ国、5つの戦争を傍観者としてではなく、“現場”で体感し、
決して軍の“偉いさん”は撮らずに、若い兵士ばかりにファインダーを向け、
がむしゃらに撮る。
それは愛国心とそれによって犠牲を払わねばならない者が必ず出るという
戦場の素顔を写し出し、また反対に、この犠牲とはなんなのか、
どんな意味を持つのかを一切のイデオロギーを介在させずに、見る人間に突きつける。
無言であるということが写真の写真たるところで
叫びや嗚咽、爆音や轟音、崩れ落ちる音までが聞こえる一葉が
多くの言葉を凌駕するのだろう。

キャパと女性、キャパとパーティー、キャパとギャンブル、キャパとビジネス。
キャパと後の文学者たち、キャパと…
どのエピソードにもキャパならではの“色気”が漂う。
ただひとり結婚を意識したといわれるイングリッド・バーグマンとでさえ、
(もっともバーグマンは当時人妻であったが)
一緒になることを拒否し、別れた。
バーグマンの著書にはキャパと結婚するつもりだったと書かれている。
しかし、キャパは「所帯を持ち、子供ができることは報道写真家に
カセをはめるようなもの」と断言する。
潔いというか、傲慢というか…
こういう男性に女性はまた弱いのかも。

生涯独身を通し、家を持たず、ひとつの仕事が終われば豪遊し、
また戦場へ向かう。自分を捕らえるものを断固、拒否する。
自由人で、我がままで、独りを愛する偏屈で人なつっこいキャパ。

そう、キャパというキャラクターは、
本名アンドレ・フリーマンである本人と恋人であり、
秘書兼営業のゲルダが造った「商標」だ。
この売り込み方とアイデアには誰もが笑わずにいられない、
ある種の爽快さがある。

カメラという武器で世界を飛び回った、
語り尽くせない魅力に満ちた一風変わった男。
歴史に刻まれた事実を至近距離で目撃し
戦い、伝え、現場で死んで行った男。

「もし、その写真がよくないと思ったら、もっと近づけばいいのさ」


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