日本でも“彼女”たちは居るのか…「女工哀歌 CHINA BLUE」

Category : ドキュメントDVD
女工

「外国人は中国をほとんど理解していない。
海外メディアは全体主義の恐ろしい国と描く。
しかし、今の中国は民主的社会で労働者の権利も認められている。」

「経営管理の仕方は2つある。
鉄拳方式か温和方式。行員のタガはキツく締めるよ。
彼らは無学で能力が低い。農民は世の中から20年は遅れている。
理屈で労働倫理を教えようとしても通用しないんだ。」

これはあるジーンズ縫製工場の社長のお言葉だ。
そこで田舎から出稼ぎで働きに来ている多くの少女たちの
工賃は時給0.5元。7円(!)だ。
しかも18時間も労働を強いられている。
遅刻は罰金。寮から無断で外出すると罰金。
ある工場では笑っても罰金。休憩時間に横になると罰金。
寮で使うお湯も有料だ。もちろん寮費も食事も…。

16歳の「糸切り役」のジャスミンを軸に映画はまわる。
リー・ピンにいたっては14歳!。
もう歳なんて関係ない。社長は元ここで警察署長出身。
押して知るべしだが、儲けるためには何でもする。
警察時代に嫌というほど“小悪党”を見てきているのだろう。
まず人を信用する気などさらさら無い。
あるのは取引先との金勘定とそれを実現するための
非常識なほどの短納期にかける“情熱”。
そして給料は遅配する。

ある部分が肥大した国は、どこかが腫れる。
ただメディアに見せないだけだ。
著しい経済成長を世界に見せつける中国も例外ではない。
監督はインタビューでも「グローバリズム」について説く。
このテーマこそが良い意味でも悪い意味でも
あらゆる事象に敏感に連鎖し、やがて大きな渦となって
ある現象を引き起こす。
アメリカ最大手のウォルマートが街にやってきたとする。
当然その街のマーケットの座標は大きく変わる。閉める小売店も出るだろうし、
同時に大きな就職口となって経済も潤う。
メディアや経済的側面から見たグローバリズムとは別物の
“実は”話がこの映画である。
週末、人々はより安い服を買いにいそいそと出かける。
手に取るジーンズは一体誰が、どこで、いくらの工賃で縫っているのか。

メインに選んでいた女工の家族への圧力、撮影スタッフの逮捕、
フィルムの没収、長時間の尋問、スパイ容疑、退去勧告…
数々のトラブルを超えて(SARSの問題もあって)
4年の歳月をかけて辛抱強く撮影した“裏”の“真”の“現場”の姿が明らかなる。
とは言っても主役のジャスミンの声は後で違う
“本音バージョン”に差し替えられている。

世界各地での反響も大きく、どこの家にもある1本のジーンズは
労働対価と資本家の搾取、果ては人権問題にまで発展する。
世界の80%の服を生産する中国。
低価格競争の蟻地獄に落ちていく大規模小売店。
店へ卸す問屋。その問屋が買う商社。商社が発注する製造者。
製造者が酷使する労働者…まだ子供っぽさが残る彼女たちには児童福祉法も
労働基準法も関係ないこの国に生まれてきたことを呪うしかないのだ。
徹夜徹夜でフラフラになってジーンズを作る彼女たちと
そのジーンズを呑気に(と彼女たちは思う)履いている世界のどこかの若者たちと
どこが違ったんだろう。
貧しい農家→女子(のみならず男子も)の教育にかけるお金はない→
満足な教育も受けずに出稼ぎ→親元に送金したいが→最低賃金で働かせられる→
逆らえばクビ→お金がない→辞められない→言いなり…

経済大国とは、筋肉増強剤を飲んだパンパンのマッチョではなく
精神的にもバランスのとれた、何より働くことに喜びを感じることのできる国と
“知恵”のある国に冠される言葉ではないだろうか。
18時間も働いて、故郷に帰る汽車賃さえままならないとは…

監督の次作はインドが舞台。
ここも驚異的な経済成長を見せる国だが、
片や農民が暮らしていけず毎年とんでもない人間が自殺している。
とんでもない数と言えば
今、中国では1億3千万人(日本の人口!)もの少女たちが農村から都会に出稼ぎに来る。
民族移動である。それも世界最安の労働者としての…
ただひとつの救いは彼女たちの「輝くような笑顔」だった。


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