その薄汚れた地球の中心でアートを叫ぶ…「The Run Up」

Category : ドキュメントDVD
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総勢26人の「ストリートアート」界の寵児たちのコンセプトや制作哲学について、
インタビューと作品、制作プロセスなどを2枚組、
約200分にまとめたドキュメンタリー。
タトゥーアーティストのミスター・カートゥーンをはじめ、
様々なジャンルの、文字通りの若手たちのオンパレだ。
タトゥー、スケートボード、グラフィックデザイン、
キャラクターデザイン、漫画などに
その活路を求めた彼らに共通しているのはエネルギーのはけ口を
アートに求めたややアブナいハングリーさだ。
進路を決めなければならない年頃に“ストリートアート”と衝撃的な出会いをして
“アーティスト”になることを決意し、成功した者。
個展をしつつも自分の才能の限界を嘆く者。
やがて会社を起こし、経営を学んでいる者。
ツール・ド・フランスでの自転車のビジュアルデザインを依頼された者。

仕事もなく、探せず、雇ってもらえない。
対価、報酬として自分に金を払う、払われるとはどういうことか。
「2ヶ月も仕事がないとボヤくヤツが居る。フン、俺なんか、ここ7年間無職さ。
何も仕事をしていない。ただ写真を撮っているだけだ。」
彼にとっての対象、それははじかれ者、アウトサイダーたち。
その連中としっかり交渉し、バッチリイカしたポートレートを撮ってやる。
この“仕事”は覚悟も体力もハッタリも必要そうだ。
並のカメラマンではあれほど真に迫った“ヤバさ”は撮りきれるものでもない。

「皮膚は最もハードコアなカンバスさ。いい食事をとっているヤツの皮膚は奇麗だが
ファストフードばっかり食ってるヤツは皮膚も堅い。
タトゥーは絶対失敗できない。車や壁に描くのとはわけが違う。消せないんだ。
20年コツコツ勉強してきた。でも、まだ存在しないスタイルの土台を築くためには努力しなければならない」
左足のすねに「魂の暗殺者達」と漢字が彫られている彼は今やタトゥー界の神様だ。
エミネムに彫ったことでローリンズストーン誌に掲載され、
瞬く間にその名前を知られることになったミスター・カートゥーン。
「昔だったらタトゥーアーチストが雑誌に載るなんてことは考えられなかった。」と語る。

ストリートアートは市民権を得ているとは言え、特殊なアプローチの仕方によっては
“官憲側”との半端でない、イタチごっこに明け暮れる。当然訴訟にもなる。
このDVDのトリを締めるロン・イングリッシュはこのアーチストの中でも
しっかりとした制作哲学を持った一人だ。
彼は町中にあるビルボードと呼ばれる大型看板の上に
現状を皮肉った、それもかなり攻撃的な内容のオリジナル、あるいはパロディ広告を
一種のメッセージとしてゲリラ的に仲間と貼ってしまう。
相当に高い位置にあるために警察も手が出ない。地上に降りたら一目散、である。
例のタバコのCAMELのロゴがCANCERに変わり、
子供ラクダに大人ラクダがタバコを勧めているポスター。
日本でも有名になったマクドナルドを食い過ぎた「スーパーサイズミー」の
とんでもデブのドナルド君。

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マリリンモンローの胸がミッキーマウスになっているポスター。
オバマとリンカーンのハーフ(?)のエイブラハム・オバマ。
アメリカンポップカルチャーの重箱をつつく様なシニカルな作品に満ちた
イングリッシュ氏のテンションは落ちるところを知らない。
実にパワフルだ。

数少ない女性アーチストの一人は言う。
「フロリダを出てどこで活動しようか考えて、いろんな土地に行ったけど
どこも物足りない。キタナさも混沌も激しさもここニューヨークにはかなわない。
私はここ以外に住もうなんて絶対に思わない」
彼女の創作意欲を刺激するもの、いや創作力そのものが
このあらゆる意味で薄汚れた地球の中心と言える魔界都市に潜んでいる。
宗教、人種、犯罪、権力、ドラッグ………そしてここから輝くアート。

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