当事者が語る被差別…「差別と日本人」

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差別

野中広務(元衆議院議員)
辛 淑玉(人材育成コンサルタント)

僕は被差別部落出身者の知り合いも在日朝鮮人も友だちもいない。
だから問題意識だけを自分の中でつつましやかに撫で上げても
ただの「良識という名の井戸」にいる蛙くんだ。
理解はするが、その実全然何も知らないのだ。

この正面切っての直球タイトル。
またこれが新書であることにも、いささか驚く。
お気軽なハウツーものや入門書、専門家のウンチクものの中にあって
このテーマを新書として発刊したことは
電車のつり革につかまって、気軽に読み流せるたぐいのものでもないのだが
一人でも多くの人に“実態を知る人の声”を
聞いてもらおうと言う願いがあったのかも知れない。
しばらくはどこの書店でも在庫が無かった。

メディアが報じない“被差別者=部落民”としての出自を明らかにした元政治家・野中氏と
舌鋒鋭く切り込む在日朝鮮人の辛氏との対談ではあるが
基本的には辛氏が質問し、野中氏が答えるという形をとっている。
辛氏の質問そのものは非常に簡潔である。
その質問あるいは野中氏の発言について補足する意味も兼ねた
過激な言い回しの「激辛な解説部分」は
全て、辛氏によるものである。

政治家野中氏が若き日に味わった“七転八倒”するほどの非差別体験を
もし、自分が経験していたら、どの様な反応を示し、どの様な行動を起こしていただろう。
野中氏の「差別をなくすために政治家になろう」という決意そのものが
自身の体験を通してなお、揺るぎないものになったことも確かだ。
あらゆる障害や攻撃、誹謗中傷に澱む川を、胸を張って渡るということは
その流れの激しさを予測しているとは言え、ややもすれば押し流され、
岩にしがみつきながらも、岸にたどり着く前に、
志なかばで溺れてしまうかも知れない。

差別をなくすためにするべきこととは別の問題もまた生じてくる。
まえがきで野中氏は、被差別部落に対する税の優遇措置や
同和対策事業特別措置法の一掃も、
被差別部落の人たちから見れば余計なことをしてくれたと思うかも知れないが
長い目で見ればメリットが大きいと信じている、と書いている。
結局、大なたをふるい、これら“悪弊”(本人曰く)を断つ。

「歴史」はある人(あるいは人種)にとっては、さも無かったかのように語られたり、
自らの行為を正当化する材料や武器に利用したり(つまり差別者として)
そうでない人(あるいは人種)にとっては、
あくまで“事実”であり、“事件”であるという確証を得られるまで
(実際は証言者が続々現れたとしても、様々な圧力がかかる)
永遠とも思える時間を費やして訴え続ける「歴然とした過去」だ。
だから「歴史認識」という“過去の出来事”への思い込みの差、
解釈の差、立場がギャップを生む。
それは教科書や被爆者、医療や敗戦処理問題も含めて、
時としてどしゃぶりの水掛け論になる。
「歴史認識」ではなくて「事実認識」としてから始めないと
議論のテーブルには座れないと思う。

合わせて20ページにも及ぶ二人のまえがきで
多少長いが引用させていただく辛氏の印象深い一文がある。

「差別は、いわば暗黙の快楽なのだ。例えば、短絡した若者たちが野宿者を生きる価値のない社会の厄介者とみなし、力を合わせて残忍なやり方で襲撃する時、そこにはある種の享楽が働いているのだ。それは相手を劣ったものとして扱うことで自分を保つための装置でもあるから、不平等な社会では差別は横行する。そして、あたかも問題があるのは差別される側であるかのように人々の意識に根付き、蓄積されていく。時の権力は、権力に不満が集まらないようにするためには、ただ、差別を放置するだけでいい。そうすれば、いつまでも分断されたシモジモ同士の争いが続く。他方、差別される側は、差別の理由を求めてさまよう。その理由をなくせば差別されなくなると考えるからだ。しかし、差別するための「理由」はいくらでも付け足しされる。結果、自らの努力ではどうにもならない状況が作り出され、多くは無力感を植え付けられていく。」

差別とは「暗黙の快楽」「ある種の享楽」「保身のための装置」…
冷徹で突き刺すような文言。
実は誰でもが潜在的に持っている「確信犯的な邪心」ではあるまいか。
一人だけが他方を差別をすることなどありえない。単純に数の構図が働く。
マジョリティーとマイノリティー。
結果、決して“多くはならないであろう少数”は恒久的に被差別者の側になる。

「差別」を考えるきっかけに、是非若い人たちに読んでほしい。

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