自己顕示欲と不幸の結婚…「TERNATION ターネーション」

Category : ドキュメントDVD
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監督:ジョナサン・カウエット(2004年)

「幸せな家庭はどこも同じ。だが不幸な家庭はどこも違う」

このドキュメンタリーがここまで評価されたのには
内容とともに映像制作の手法によるところも大きい。
いや、ビデオカメラが防波堤やシェルター、あるいは武器になった。
監督自身の“ひりひりとした”痛ましいまでの家族の状況を
160時間にもなるテープとフィルムからの「僕のいきさつ」が元になり、
コラージュや独特なスピーディーな展開により
とてもパンクなドキュメンタリーに仕上げた。

一世を風靡した超有名人の元モデルである母。
スカウトされ、トントン拍子にスターへの階段を上ると思われた彼女が
12才に屋根からの転落するという事故に見舞われる。
膝を曲げずに着地した母。
マヒが残り、精神的に病んでいく母。
実は過去にひどい虐待を受けていた母は以後、
人生のほとんどを精神病院で過ごしている。
100以上の病院での治療。
当然子供を育てることは叶わない。
父である“軍人”は息子が生まれたことも知らずに他の土地へ…。
母はシングルマザーとして第二の人生の扉を開けるはずだった。
可愛い息子という財産を得て…
しかし、現実はまたしても残酷な列車のドアを開ける。
レイプ…
心に大きな傷を負いながらもなんとか生きようとする母は
その意志とは裏腹に蟻地獄のような状況に陥る。
カウエットも別の里親の元に引き取られるが
ご多分に漏れずここでも縛る、殴るの虐待…。
また暴力、麻薬のはびこる児童養護施設で体験も
彼にとっては“ほんの記録の一部”であったのだろう。
そんな過激でやり切れない日々の“記憶”を
画像として残しておくことに自らの存在の意義を確かめていたのだろうか。

母の文字通りの“転落”は、リチウムの過剰摂取で脳そのものに損傷を受けたことにより
さらにさらに深い闇に落ちていく。
段階的に挿入される母の様子は見ていて不憫だ。

これはカウエット氏の母へのラブレターであり、また現実の理不尽さへの憤りでもある。
しかし現実はどこまでもリアルだ。
彼がゲイであることも、彼の生き方そのものに深い影響を与え、
彼の一生に大きな“意味”を持つ「リアル」だ。

iMacと編集プログラムのiMovieで(それもボーイフレンドから借りている)
作ったこの長編映画の制作にかかった費用は、なんと218ドル32セント。
これはとんでもない低予算映画という前書きよりも
カウエットの率直な道筋であったはずだ。
編集ソフトのことも映画関係者も知らない一人の青年が
膨大なプリント写真をスキャンする金も無いために
壁に貼ったそれらを撮ったという事実もまた、
関係者をあっと言わせた“がさつで強烈な”映像を作り上げる意図も策略もない、
経済的な理由からだったわけだ。

10代の時から実験映画に取り組み、以後現在も俳優の仕事のかたわら
記録することを辞めない。もちろん母レニーとの言い知れぬ関係も…。

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