不客気(プーカーチー)の国…「こころ熱く武骨でうざったい中国」

Category : 100円本雑読乱読
こころ

麻生晴一郎 著(情報センター出版局)

有り体の紀行ものとは一線を画するルポ。
20歳からの16年間で中国への旅は37回にも及ぶという著者。
失礼ながらそこまでになると“中国フェチ”と言いたくもなるが
実は中国“人”フェチなのだ。
肝心なのは、タイトル脇にある危うく見落としそうになるほど小さい副題、
「書くことを禁じられた長旅」だ。

このフリーライターは、行った先の状況描写もさることながら
自分が関わる、もっと言えば自分から関わる人間描写に
ページを割く。
中国という四千年の歴史を経て、お化けのようになっている国を
一冊の本、多くの活字をもって表現することよりも
そこに生きる“生身”の人間を描く方が魅力的だ。
木を見て森を見ずの解釈を当てはめてみても
東と西では、都市と田舎ではあまりに違い過ぎる。
上海と北京、四川、ハルビン…どれもが中国であり、
行ったことのない僕には全く違う国にも見える。
ただ、僕が「中華人民共和国」と認識している国家は
社会主義たる根幹思想の砦の外に
桁違いのマネーを吸い寄せる怪物が潜んでいるという、
異様に歪んだ現状の“よくわからない”場所だ。
しかし回り出したんだからもう止まらない。

スタバやハーゲンダッツ、ルイ・ヴィトンの店が立ち並ぶ北京もまた
ボンネットタイプの旧式トラック、トヨタのランドクルーザー、
高級マウンテンバイク、廃品回収のリヤカー、荷馬車が道を行き交い、
ビジネスエリート、ルンペン、軍服の兵士がすれ違う街だと、ある。

中国は何を目的として訪れるかで全く違う意味をもつ国。
このルポに登場する中国人に、著者は辛辣な対応をしたり、
冷静な分析をしてみたり、その背景に納得したりしながら
「中国人」との人間関係の妙を
時に楽しく、時に不思議に、そして時に“残念”な思いで綴る。

豊かさと貧しさはどこでも合わせ鏡のように存在するが
かつての高度経済成長期の日本と
現在のマーケットを牛耳る中国の状況を比べると
やはり国民性の違いが如実に出る。それは精神性とも言える。
モンスターチャイナの裏側に食うや食わずの民がひしめいている。

ちょっと前に世間を駆け巡っていた「勝ち組と負け組」も
そのボーダーラインさえ霞んでしまった日本。
バブルという、地球が無くなくまで二度とない狂気の一瞬を
経験したこの国には、ある共同幻想とも呼べる意識がある。
それは程よい人口と国土面積、何より島国であることに
起因しているのかも知れない。
大陸環境との差異。
あれだけの人間がいる中国では「統制」こそが大きな命題だ。
著者は、思想や表現の自由のための
ささやかな抵抗を示す芸術家たちも紹介している。

経済と思想との“擦り合わせ”に苦慮しながらも、
世界のバンクで一気にマクる中国経済は
強いものは強い!の判りやすい構造を示してくれる。
だから弱い民、下々の者のなんと生きにくいことよ。
搾取や汚職、ワイロや八百長まで何でもありの中国もまた
どこにもない魅力にあふれた国なのだろう。

キミ(著者)の友達である僕(中国人)の友達は、キミの友達。
だから、初対面でも僕の友達の所に泊めてもらったらいい。
そして僕の友達が日本に行った時も同じく初対面でもキミの家に泊めて欲しい。
だって僕の友達はキミの友達だから…。
食事も金も寝場所も…こうした強固な横の繋がりは
クモの巣のように、がんじがらめでもあり、
またお気楽でもある。友さえ居れば万事何とかなるさ…。
中国人独特の関係性をこの本は嫌と言うほど知らしめてくれる。
著者は所帯を持ちつつも、自分の家に相当数の中国人を居候させてきた。
おそらくこれからも…。

ある日、台湾からの留学生の個展で
僕の「台湾には是非行きたい」と言った時の彼のうれしそうな顔と
続けて「中国へは行きたいとは思わない」の
同じく僕の、多分予想だにしなかったであろう発言に対しての、
悲しそうなリアクションが印象に残った。
なんだかデリカシーに欠けていたな…自分に対してそう思った。

ある記事で、中国人に対しての違和感(はっきり言えば悪口)を伝えたところ、
その中国人は言った。
「世界中の5人に1人は中国人なんだから、
あなたが言う悪い人も多いかもしれないけれど、
いい人も同じくらい多いですよ」
もっともだ…。

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