大陸の呪うべきアザ…「残酷な楽園~LIFE IS SHIT SANDWICH~」

Category : 100円本雑読乱読
3_20100105180646.jpg

著者:降簱 学(小学館)

確か中学校の教科書に載っていた「白豪(濠)主義」という言葉。
その“言い切り型”の強烈な響きは妙に生々しく記憶の片隅にある。
1970年以降にこの差別政策の転換を図ってからは
なんとなく死語化した感もある。
イヤな語感である。

本書は週刊誌記者を経てノンフィクションライターとなった著者の
「週刊ポスト」「SAPIO」21世紀国際ノンフィクション大賞優秀作に
加筆・訂正の上、一冊にまとめられたもの。
初版は13年前。
オーストラリアの“成り立ち”を知ると言うわけにはいかないが
こうした歴然とした事実が過去にあった(今でも)ことを知るに値する、
また受賞もなるほどと思わせる300ページに及ぶ社会派ルポである。

まず著者に金をたかり、断ると「ライフ・イズ・シット・サンドイッチ!」
(人生なんて糞まみれ!)と吐いたストリートチルドレンについて話は始まる。
UP通信社の国際報道部次長にその意味を問うところからプロローグとなり、
被差別者である先住民族アボリジニについての記述がほぼ本文を占める。
人口としてカウントされていない、ということがすでに
多くを語っている。そういう国だったのである。
文化レベル(あくまで欧州が査定する)が低いということへの辛辣な態度と攻撃。
「アボリジニ狩り」なるものを平然と認めていた国があるということに
ため息が出る。文字にするのもおぞましい虐殺。
いや虐殺を楽しんでいた“侵略者”たちの描写は耳を疑うほどである。
人種隔離政策はここでも当然のように行われ、
結局のところ、歴史はそれほどに良心的な結末を用意してくれなかった。
親との引き離し、収容所、生活保護、アルコール依存症、さまざまなトラブル…。

ページに多くを割いたアボリジニに続いて
彼らがかつて生活していたエリアでの核実験問題。
当時のオーストラリアの核保有をめぐってのいきさつ。
そしてベトナム戦争が残したものは枯れ葉剤による奇形児のみならず
アメリカ合衆国同様に帰還兵へ向かう、止むことのない強い風である。
心を病んだかつての“戦士”たちは
自殺という最悪のボタンを押し、その数は当時で約2000人にも上る。
一方でオーストラリア独自の徴兵制への断固とした拒否。
生まれいづる伝説のヒーロー。

エピローグは再びストリートキッズに戻る。
読者のモヤモヤはもしかしたら
このテーマの掘り下げが足りない点にあるかも知れない。
この本が書かれた13年前に
白人である彼らの“落ちていった”過程こそを
綿密にルポして欲しかったと思うのは
僕だけではないはずである。
そこには当然親世代が絡み、世間の良識や
いやオーストラリアならではの風土性が深く関係しているかも知れないからだ。
2010年の現在に繋がる“線”がここに隠されているやも知れぬのだ。

いずれにしても、
コアラとカンガルーの陽気な楽園、サーフボードに乗ったサンタの国、
そして厳然と存在した白濠主義という“消えないアザ”がある国、
オーストラリア大陸の“内臓”をわずかばかりでも知ることができたのは
とても意義深いものがあったと思う。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ



スポンサーサイト

Comment

非公開コメント

58カ国語に翻訳
English
お越しいただきありがとうございます

den

………………………………………
アート・ドキュメント・ブック・
ミュージック・演劇・ダンス・
朗読・時事・ひがみ・そねみ・
やっかみ・おせっかい…
などなどシッタカぶって書きちらかしては
自己嫌悪な日々をゆらゆらと
過ごしております。
「シッタカブリアンの午睡」
「デラシネ光合成」をこのたび一本化。
言いたがり、やりたがり、ノリたがりな
のんのんとしたブログにお越しいただき
ありがとうございます。
………………………………………

ここから、また…
最近の書き散らかし…
こんなこと書いてます
こちらへもどうぞ!