道徳的多数の中で誠実であることとは…「ハーヴェイ・ミルク」

Category : ドキュメントDVD
ミルク

監督:ロバート・エプスタイン

笹野みちるというミュージシャンがいる。
東京少年と聞けばご存知の方もいるかと思う。
彼女が1995年に「Coming Out」(幻冬社)を出版した時、
業界もファンも、そうでない、彼女の名前をおぼろげながら知っている人も
みんな一様に驚いた。
この自らがレズビアンであることを告白した本はベストセラーとなったが、
その後の鬱や情緒不安定から、生まれた街である京都に戻った。

カムアウトすることはいつおろすとも知れない重い荷物を
放り投げたような解放感とそれでいて荷物の中身は
もしかしたらグジャグジャになっているかも知れないという
これも重くて長い不安を抱えることになる。
反響は有名であることと比例するほどに心強く、そして厳しい。

本年度アカデミー賞で主演男優賞と脚本賞受賞の
ガス・ヴァン・サント監督の「ミルク」その人を追った
ドキュメンタリーである本作は1984年度アカデミー長編記録映画賞を
受賞している。

ハーヴェイ・ミルクの敵は一体何だったのか。
衝撃的な彼の人生の終止符…。
それは「正常」であれという原理主義を尊ぶ道徳的多数を占める
市民社会の中では予測された結末だったのか。
たった1年にも満たない任期の中で成し遂げた案件はどれも画期的だ。
ゲイやレズは勿論、黒人や中国人などの有色人種、老人などへの厚い配慮と
草の根運動は、最初ゲイである彼を忌み嫌っていた人たちを徐々に見方につけ、
やがて絶大なカリスマになるミルク。

彼の一番の理解者であったサンフランシスコ市市長マスコーニと共に
同じ市政執行委員の敬虔なクリスチャンである“同僚”に
射殺されるというショッキングな最期を
ハーヴェイ・ミルクというマイノリティであることのリスクを
ものともせずに突き進み、常にアグレッシブに誠実に
真摯な態度で接してきた彼に当てはめるのは極めて難しい。
多くの市民に愛され、支持された彼のほんのすぐ横に
“わかりやすい敵”が居たことの驚き。

アメリカという国の持つ原理的(信仰的)な部分と
急進的な部分の軋轢を、
当時の政治家や世相の中でリアルにあぶり出した
貴重なドキュメンタリーである。

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