たゆたうように読まされる…「ブラフマンの埋葬」

Category : 100円本雑読乱読
ブラフマン

著者:小川洋子(講談社)

或る出版社の社長が遺言によって
無償であらゆる創作活動に励む芸術家たちに
かつての別荘を「創作者の家」として提供した。
“僕”はそこで住み込みの管理人をしている。
そこへ“迷い者”がやってくる。
ブラフマンという名を付けられたその“毛の生えた動物”が
果たして何なのかは、この物語ではさして問題にはならない。
最後まで読者にその正体を証さないブラフマン。

創作者の家に滞在する画家、小説家、音楽家、詩人、翻訳家などの
プロフィールも曖昧なままである。
“僕”とそこそこ親密な「碑文彫刻師」の彼、
最近やってきたレース編み作家の老婆、
日用雑貨店の娘、そしていつもそばにいる従順なブラフマン。
耳慣れない「碑文彫刻師」にまつわる話も
ひっそりとした不思議さがある。

なんら起伏に富んだ話があるでもなし、
平和なひと夏の村の陽炎(かげろう)のような時。
娘の運転する車にはねられてあっけなく死んでしまうブラフマン。
埋葬に立ち会うホルン奏者が葬送の曲を吹く。
刺繍作家が編んだおくるみを
碑文彫刻師が作る石棺に納める。

ただそれだけの話。
しかし、森や泉に囲まれた村の
草いきれや通り過ぎる風や葉音が
僕たちを“その場所”へと手招きする。
不幸な結末なのに、この世の「現れた者はやがて消え入る」という
不文律を静かに受け入れる状態に、読み手を催眠させる。
まぎれなき小川洋子の世界、である。
リアル・ファンタジーと称する人もいたが
「ブラフマンの埋葬」は
それはいつなのか、どこなのか、誰なのか、さらに何故なのかを
それぞれの脳内スクリーンでゆっくりと楽しむ。
そんな小説である。

初夏のアフタヌーンティーのお供に…ぜひ。

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