抱きしめるように撮る…「彼女の名はサビーヌ」

Category : ドキュメントDVD
サビーヌ

監督:サンドリーヌ・ボネール

自閉症である監督の妹を追ったドキュメント。
監督はパトリス・ルコントらのフランス監督がご贔屓な女優。
カメラワークも彼女自身であるために、
現場ではささやかではあるが、予期せぬ状況にも遭遇したりもする。

サビーヌは十一人兄弟の七女であるサンドリーヌ・ポネールの一歳年下の妹。
自閉症はわかりにくい病気であり、周囲の理解を得るのには時間もかかる。
この映像を見ていると、なるほどサビーヌを取り巻く“何か”、
それは医師の判断であり、対処であったかも知れない、
そこに何らかの間違いがあったのではないか、と姉は思う。

撮影時、38歳のサビーヌ。
幼少時やティーンのサビーヌの映像が
挿入される度に、現在のサビーヌの姿との痛いほどのギャップ。
兄の死によって孤立し、家族との繋がりが
自分自身の中にある衝動的な暴力によって破壊された。
かつての芸術的才能にあふれた美しい少女、
バッハのプレリュードを演奏している姿は
人生のほんの入口で待ち構えていた精神病院という
閉塞感と絶望感に満ちた5年間の中で、
見る影もなくなるほどに変わり果てる。

自閉症は最も発症率が高い障害で
社会性の障害や言語障害だけでなく行動障害がともなうので
家庭、学校、福祉施設、職場などでの対応が
最も困難だと言われている。
もっとも成人しても就職できる人は稀で、
やはり対人関係のトラブルでひきこもりになってしまう人も多い。
一番深刻なのはこれほどの発症率なのに原因がわからないということ…。
誰にでもある不安や悲しみや怒りの感情。
社会で生きていくためには、ここを抑制する。
しかし自閉症者はそこの自己コントロールがきかない。

よだれをたらしながら、時折険しい顔で職員に食ってかかるサビーヌを
ある冷静さを保ちながら映す姉も辛いだろうと、いつしか観る者の目と重なる。
姉にとって一番近い哀しみであり、一番近い愛。
一歳違いの姉妹の間にある深い情と、
妹をここまで変わらせてしまった不適切なケアへの怒り。
そして、あるがままの今の妹を受け入れざる得ないもどかしさ。

監督自身はサビーヌの様子が悪化した頃に
すでにこの映画のプランがあったという。
しかし女優が撮るという一種の“傲慢”と捉えられないかという危惧があって、
なかなか踏み込めなかったと語る。
レインマンのような、特別な才能をもった自閉症者というカタルシスを伴わない、
ごく普通の人間としての尊厳と理解、
彼女をとりまく環境に対してを問題意識を促すという意味で
撮られる側として長く関わって来た映像手段を選んだのだろう。

最後に監督は自身に質問する。
「彼女の状態は回復するのか。機能が後退していくのは
病気が進み続けているからか。薬なしで生きられるのか。
彼女ともう一度、旅が出来るか…」

サビーヌはこの映画を繰り返し観てるという。



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