愛に満ちた記録…「ANVIL! 夢を諦め切れない男たち」

Category : ドキュメントDVD
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監督:サーシャ・ガヴァシ

「成功のカギ、それはタイミングと良きナビゲーター」

給食センターの配送センターで働く五十路男。
男の後ろ姿に哀愁といったものは感じられない。
それは救いでもある。
何よりもこの映画を清々しいものにしているのは
多少薄汚れた感のある、頭頂部も薄くなった、が頑張って髪は伸ばしている
このすでに壮年といえる彼らの、その瞳が子供のように澄んでいることである。
邪気の無い笑顔と素直な感情表現は、
ステレオタイプなヘヴィメタルのミュージシャン像を裏切る。
そして多弁。
感情をじっと閉じておけるほど達観していない。
腹のたるんだロートルロッカーでも夢を追い、
実現するために今日を生き、明日に望みをつなぐ。
間違いないことは
「誰かが俺たちを待っていること、そのためにやり続けなければならないこと」。

ANVIL(アンヴィル=金床)というへヴィー・メタル・バンドにふさわしい
強固なネーミングで1980年代にロックシーンに現れたカナダ出身のバンドを
待っていたのは、しかし永遠に続くと思われるほどの
長く苦しい道のりだった。

冒頭のライブシーンは1984年8月11・12日の
西武球場での「SUPER ROCK '84 IN JAPAN」。
アンヴィルがトップ。
続くのは当時デビューアルバムを出して間がないボン・ジョビ。
そしてスコーピオンズ、ホワイトスネイク。
トリはザ・マイケル・シェンカー・グループ。
蒼々たる面子である。

現在、重鎮と言われるヘヴィメタルのバンドの中で
アンヴィルをリスペクトするメンバーが数多く存在するのは
彼らの真の実力の証しであることは明らかだ。
「パワーメタルの父」「スラッシュメタルのゴッドファーザー」と
呼ばれた彼らは多くのバンドに影響を与えた。
しかし、である。
その敬愛してやまない彼ら自身も首をかしげる
アンヴィルの“その後”。

このドキュメンタリーは
以後の30年間を全く売れないロッカーとして、
いやもっとぶしつけに言うなら「腐ってもロッカー」の
意地を賭けた彼らの人生のロードムーヴィーだ。
幼なじみのドラムのロブとギター&ヴォーカルのリップは
それぞれの家族の誰よりも一緒に居る。
ほぼこの二人がメイン。
売れないのはメジャーレーベルからのデビューだったこと。
まずそこの地固めタイミングを外した彼らは、
その痛手を延々と被る羽目になる。

印象的なシーンは、
リップが、まずは金の工面のためにと、
かつての熱狂的ファンが、今や電話で勧誘し商品を“売りつける”ビジネスの
社長になっていたことから誘われ、
実際にやってみるが全く売れなかったこと。
「オレは厳しくしつけられてきたから、こんなことはできない」。
彼は大変実直な男なのである。
観客はここにある種のカタルシスを味わう。
攻撃的、扇情的なヘヴィメタルと彼の本性のギャップに
ふと安堵したりする。

家族に借金、プロデューサーを迎え、完成したアルバム。
こんどこそはと前のめりに鼻もふくらむ。
しかし反応は鈍い、どころか地元カナダからでさえ冷たい返事。
当初の意気込みとは裏腹にファンたちに
手配りで(とはいってもネットで)アルバムを売るという
まるで逆戻りしたかのような展開。

そこに朗報。
日本でのライブへのオファーが舞い込む。
かつて200人のキャパで4人ほどの観客を前に
(それでも手を抜かない、いや抜けない正直ロッカー!)
演奏した苦い経験はやはりトラウマ。
心配をよそにやんやの喝采とヘッドバンキングのうねり。

13枚目のアルバム発表。
この映画との相乗効果で
今一度の完全復活をファンのみならず願っている。






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