金魚鉢の中の嘘と真実…「クリスチネ」トリコ・A・プロデュース

Category : パフォーマンス見聞
クリスチネ

作・演出:山口 茜
出演:岩田由紀 仲野毅 鈴木正悟 筒井加寿子 他


3月23日→3月28日【アトリエ劇研】

ワークショップの講師がこの劇団のメンバーであり、
また自己のブログにコメントするという条件で試演に招待。
コメントが条件とされると筆ならぬマウスも中々に重い。

わけがわからなくても直感的に入っていけるものもあるから、
程度にもよるが、僕自信は難解な演劇は苦手だ。
昔は高感度だった(あるいは高感度だったフリ)のに
アンテナが型遅れなのか、チャンネル数が減ったのか、
どうも下世話なものが好きになっている。
ただし新劇チックなのは例外。

僕は世に言う“役者”からいただける贈り物のリボンを解くのが大好きで
ましてやWSでご一緒した役者さんが出られる時はワクワクする。
脚本という、作家と役者がジャングルジムの中を
あっちこっちと追いかけたり、逃げ回ったりしているのを
見るのが好きなのである。

舞台上は最小限の家の輪郭とくすんだ日用品。
そしてカギのかかるなんだか不思議な臭い裏部屋。
どうやら家は競売にかけられ、明日にもあちらが越してくる気配の中で
一人の男Aがなぜか家に居る。

男Aの住んでいるアパートは壁が薄いために
隣りの男と一緒に生きているような錯覚に
いたたまれなくなり、戻ってきて住んでいる。
その男Aの妹D。
妹の彼B。
Bの同居人女C。
AはBによりを戻そうとCから持ちかけられたとBに話す。
BはCが幸せになるならそれもいいと言う。
しかしCは彼らが一緒に居るところを見て同性愛と感じる。
この辺から話がすぅっと見えなくなる。
同性愛は面白いが結局、どうでもいいネタにされてしまった。
言い訳に(もしくはなりゆき的に)「同性愛」を具に使うのは
確信犯的で、男同士のダンスも観客にはウケだろうが唐突だ。
あくまで“対異性”の中で(それは誤解を恐れずに言えばマジョリティであることとして)
とことん、くんずほぐれつ、やってほしかった。
もう「ぬかるみの世界」をレッドゾーンまで振り切りながら…。

演出家がそのタイトルをとったイプセンの「人形の家」は
現在のジェンダーへの意識変革の中では当然の“権利”が、
当時は大胆なヒロインの行動が問題視され物議を醸し出した作品。
ノラは「金銭」にまつわる醜態なプライドを夫に見たわけで、
この「クリスチネ」でも事の発端は「金」だ。
4人はいわば宿命的な繋がりの中で、嘘臭い愛を語り、
がんじがらめになりながらも付かず離れずを繰り返す。
そうしながら追いつめられた人間は
自己暗示による「夢中人」という異物との共生を夢想しながら
軽快なトランス状態に陥る。

話は様々な具材を溶かし込んで終っていく。
が、料理の味は観客に伝わったのか。
用意された調味料はふんだんにある。
役者という高いスキルを身につけた器もある。
もちろん新鮮な野菜も肉も。
要はそれをコース仕立てに組み上げていかねばならない。
大団円でなくても、ささやかでも…。
懲り過ぎは胃にもたれる。

女の前に流れる深さ30センチほどの川に溺れる男の話や
好きな男の背中にもたれていたら突然背負い投げを食らった
女の話にしてほしかった。
それは切なく、可笑しいから。

演出家の好きなクリスチネのセリフに
「私もね、この世間に生きていて、板片一枚にしがみついている難破人ですのよ。
(中略)わたしたち二人の難破人が一つに寄ったらどうでしょう?
てんでひとりきりで自分のこわれ船に乗っているよりも、
二人で一つの船に乗った方が、心細くはなくって?」
(岩波文庫「人形の家」ヘンリック・イプセン作/竹山道雄訳)

心細くないのはほんの束の間。
なぜならもっと重くなって、それだけ早く沈むからだ。
一緒に堕ちる相手を探す。一人では堕ちない…
そんな怖さがあってもよかった。

キャストの皆さんの演技はさすが。
当たり前なのだが、今、僕の目の前で起こっていることは
“セリフを覚えて演技して”いるという事実。
そこに単純に驚く自分がいた。


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