血と水…「卵の緒」

Category : 100円本雑読乱読
せお

瀬尾まいこ著(マガジンハウス)

いわゆるヘタウマ装画。
全体にバランスの悪いレイアウト。
タイトル文字もなんだか野暮ったい。
ちょっと表紙で損しているかなぁと思いきや
読み終わって表紙をじっと見ていると、
不思議としっくりくる。

自分のことを捨て子だと思っている小6の男の子と
結果的に母子家庭を支えている率直であけすけな母。
子どもへの愛し方がさっぱりしたボン酢のように
後腐れなく、どんな相手でもこんなつき合い方ができたら
いいなぁと思わせる母親である。それもかなり若い。
この母が子どもを“手に入れた”いきさつもなんだか
ありそうで、なさそうで、でもやっぱりありそうなのだ。
なんとなく川上弘美チック。
少年はこう推測する。
「うちにはへその緒がない。だから捨て子だ」と。
この辺の短絡さが子どもっぽくていい。
母は箱を出してくる。
中身は卵の殻。
母のこのひと言が最後まで効いている。
「誰よりもあなたが好き。それはすごい勢いであなたを愛しているの。
今までもこれからもずっと変わらずによ、ねぇ。
他に何がいる? それで十分でしょ」

手に入れた大好きな“子ども”に
こんなストレートな表現で愛を伝える。
少年もそんな母の語り口にはすっかり慣れている様子。

もう一作の「7's blood」もやはり血のつながってない家族の話。

さて、誰もが受け取る読後感、「血のつながり」とは一体何だろう。
そこには“絶対”というあたかじめ用意された契約があり、
同時に永遠に逃れられないDNAというしがらみの中で
時に「血筋」などという、ある世界では無くてはならない条件となる。

血縁? そんなものは思い込み以上のものではない…
そんな気さえする。

生みの親にも育ての親にもあまり“濃い”関わりをもった記憶がないだけに
重くて鬱陶しい“血縁”を軽々と飄々と語るこんな話を読んでいると
やれ、産んだ育てた捨てたと自己憐憫に浸っている“いい気”な自分が
なんだかくだらない存在にも思えてくる。
血縁は愛情と必ずしもセットにはならない。
憎悪を道連れにした血縁もあれば、
果ては子殺しに発展してしまうおぞましき不幸もある。
一人ひとりが改めて「親子」や「兄弟」といった
言葉に“仕組まれた”純正部品をもう一度取り出して、眺めつつ
検証してみたくなる作品である。

ポッと小さな灯がゆらゆら揺らめいているような
いつまでも手の中でころがしていたい世界がここにある。


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