切れ味抜群のエッジを持つ染…「前川 多仁 展 - K I T S C H - 」

Category : 現代美術シッタカぶり
5月25日→6月6日【neutron kyoto】

作家にとって重要なキーワードのひとつに「工芸」と「キッチュ」がある。
工芸は「手技」や「匠」の世界である。
そこには“売り物”としての成果を職人が誇る、寡黙だが重厚な味わいがある。
それは同時に「継承」や「真摯」といったイメージももたらす。
大量生産されることで、つまり工業製品であるという条件で
その“威力”を発揮する「キッチュ」とは対局にあるように思える工芸だが
実は日本文化にはこれと全く同義のニュアンスが脈々と受け継がれてきた。
それは日本独自の工芸的なるものの上に成り立っているもので
身の回りを探せば枚挙にいとまが無い。
花札、家紋、のれん、浴衣、入れ墨、祭事にまつわるもの、歌舞伎…
どれをとっても、そこには“裏”日本が見える。
侘び寂びを重んじるA面をひっくり返すと見事なまでに鮮やかな
キッチュな世界がそこに現れるという妙なる仕掛けがほどこされている。
着物の世界で言えば、様式としての服飾文化、民族衣装としての捉え方は
当然あるわけで、それ以上に表層を彩る意匠というものに
卓越したセンスを感ぜずにはいられない。
いや大正の頃のその柄といったら正にキッチュ以外の何ものでもない。
モチーフは我々の想像を遥かに越えてしまっているのに
当事者たちは平然と楽しんでいるレンジの広ささえ感じる。
げにおそろしきキッチュ、である。
作家が語るように、それはオタク(的)文化と工芸との両A面を構成している。
つまり、日本人の美的感覚というものはかねてから結構なオタク的審美眼をもってして
今日まで継承されてきているというわけだ。

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↑会場を“呑む”ほどのインパクト

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↑これで寝たら果たしてどんな夢を見るだろうか…

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↑軸が日本刀。これはドンピシャ! 会場の隅に鞘が立てかけてあるのもドンピシャ!

前置きが長くなってしまったが、
作家と会場で話していると、密やかに日本の意匠力や手技というものを
誇りに思う自分自身に気付く。

自立できない一枚の布。
作家はこの「ひとひら」にこだわる。
染織工芸の「ろう染め」という手仕事にデジタルテクノロジーを融合させ、
さらにモチーフとしてコミックやアニメ(特にサムライとニンジャ)からの引用
(というより作家自身が大好きな)により
作家の素地に潜在的にあるサブカルチャーの多大な影響が作品に投影されていることは
一目瞭然である。
ホワイトキューブにまるで毛皮を貼るようにテンションをかけて展示された布は
闘争的で攻撃的な色合いと鋭角に満ちた描写で観客を一瞬とまどわせる。
本来の生地模様に、染め、印刷、刺繍などが渾然一体となって迫ってくる。
まるで感覚的な(視覚的効果とは別の)3Dのようだ。
しかしそこに物理的な厚みというものを与えない。
そこは徹底している。
それが作家の求める染織である。
相当に込み入ったプロセスを経た作家の“想いのたけ”をはらした作品。
会場全体を日本間のように見立てて、床の間の掛け軸、寝具、
あまり作らないという一枚のタブローは、さしづめ襖か。
作家は言う。
「キッチュなものに多くの影響を受けた私にとって制作とは
生命力を昇華させる行為でもある」

※バルト三国の一つラトビアの首都リーガにある美術館【The Museum of Decorative Art and Desigin】
にて前川多仁氏の個展が2011年に予定されている。


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