濃厚な歴史を垣間みる…「ザ・ヒストリー・オブ・アメリカンコミック」

Category : ドキュメントDVD
アメコミ

監督:ロン・マン

ふと「禁酒法」を考えた冒頭。
話はかなりそれるがご容赦願いたい。
そもそも「禁酒法」とは日本の誤訳であるらしい。
正確には「酒類製造・販売・運搬等を禁止する法律」だとか。
飲んでもいいのだが、作ってはいけないとなると飲めない。
この法律によって、その後一気にギャングが仕切り出し、官憲への買収行為を
蔓延させ、アメリカはとんでもない世情を招く。
結局税収の落ち込みによって13年後に廃案となる。
こんな馬鹿げた法律を作っていたアメリカは
その20年後にコミックブックスの規制に乗り出す。
規制について線引きは厳然、かつこれも過剰に反応した結果だが
「犯罪、ホラー、恐怖、不気味」といった言葉を禁止したのである。
これもまたアメリカ式のある種の法の持つ強靭さか…。
僕はこのどちらにも「多民族国家」としてのアメリカの様相が
如実に、明快に表されているように思う。
信仰の自由を求めて大陸に移住してきたピューリタン(清教徒)たちによって
(実はここにも不思議な話が隠されているのだが…)
飲酒の反対運動が起きたのは、アルコールによって、
社会全体がレロレロになってしまったからである。
何事にも想像を絶するとか、限界を超えたところがアメリカの魅力と言えば魅力だが
それもこれも様々な宗教やイデオロギーを持った人種のるつぼそのものが
コミックから受ける影響は決して半端ではないということについての危惧である。
このままでは少年犯罪が多発して収拾がつかなくなるといった
「犯罪先進国」の汚名をはらすために、まずは芽を摘まなければならない。
残虐で暴力的なコミックを見た子供が過激な行動をとるという短絡的な発想は
当時、コミックに詳しい識者も居なかったであろう状況から考えると
まずは市民の国民のアメリカの恥であるコミックを共通の敵とする
常套手段に打って出たわけだ。

そこで、また思い出したのが
東京都の青少年健全育成条例の改正案である「性描写規制案」だ。
こういうのは法律として明文化すると何ともトンチンカンなものに映る。
これも短絡極まりない話だが、
漫画そのものの質の低下という問題もある。

漫画などで服装や学年などから18歳未満と判断される登場人物を「非実在青少年」と定義。
こうした子供への性行為を描写した作品は、青少年に販売しないよう業界に自主規制を求め、
悪質な性描写の漫画などは青少年への販売・閲覧を禁止する不健全図書に指定する


“悪質な性描写”とは何ぞや?
では悪質でない性描写とは?
文学でも映像でも性描写についての論議はループする。
最終的に日本の漫画家たちへの落とし所は?

過去のアメコミに登場したスーパーヒーローは
戦意高揚→愛国心というセオリーを忠実になぞったものだが、
戦後は過去の遺物となり、刺激的という条件を満たすための
ホラーや犯罪ものが主流となる。
コミックス・コードによって骨抜きになったアメコミなど誰も読みはしないだろう。
結果的に業界が衰退するだけで何ももたらさない。
それをかいくぐりながら生き延びている彼らのエネルギーは確かに強力だ。

僕はジャニスの「チープ・スリル」のジャケ写でロバート・クラムを知った。
この映画の中で一番楽しみにしていた作家である。
アンダーグラウンド・コミックスについて、
これほどバラエティに富んだ作家が紹介されるとは正直思ってもみなかった。
カウンター・カルチャー、そしてドラッグからのサイケデリック・カルチャーの
とんでもない威力が、ペンの先からほとばしり、希有なキャラクターたちを生み出した。
奥の深いアメコミ文化を知るに恰好の材料である。

あのフリッツ・ザ・キャットの主人公も映画化されるや
原作ではガチョウの彼女にアイスピックで殺されるという悲惨な結末を迎える。
これもあくまで彼はアンダーグラウンドの住人のまま、
消えていくべしという作家の思いが切々と伝わる話で興味深かった。

また、ミッキーとミニーとのセックスシーンも描かれ、生まれた子供たちが
やがて誘拐事件を引き起こすという顛末を迎えるものもあり、
これなどは“良識の偶像”たるミッキーを栄光のステージから引きずり降ろすという
ディズニーへのアンチテーゼをリアルに発信していて面白い。

※なお、ブログへのアップ後、性描写規制案は都議会で否決された。

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