さりげなく粋に、幸せに撮る…「写真とボク 植田 正治 写真展」

Category : 現代美術シッタカぶり
5月21日→6月13日【美術館「えき」KYOTO】

「新出雲風土記」と題する一冊の大判の写真全集を開く。
第5巻の植田正治写真集。
郷里の山陰に居ながら自称「アマチュアカメラマン」として
多くの傑作を撮った植田正治が
ライフワークの一つである「出雲」を撮ったものだ。
植田氏の住まいは鳥取県の西の端。
今でこそ行政上は鳥取県だが、その昔は出雲の国であった。
神々の伝説に裏打ちされた神秘の国。
前書きで氏は「新出雲風土記」にはあくまでプロの仕事としての情熱で
取り組んでいる、とある。
使用機材も大型から中型のカメラによるカラー。

あまりにも有名な「砂丘」のシリーズなどを見てから
この写真集を見ると、なるほど同じ出雲大社も
氏が撮るとこうなるのかと感心させられる。
空や背景となるものとのコントラスト。
この絶妙な対比を一元化したものが植田写真ではないかと思うのだ。
有名な砂丘の写真は、あらかじめ綿密な思考のもとに
家族を注意深く“配置”して撮られたもので、
それこそ誰もが異口同音に「レイアウトの妙」に尽きると言う。
モチーフである出雲大社もその造形美と
神への畏敬の念というものを
張りつめた空気の中、余す所無く伝えている。

写真に特別な意味性をあえて持たせずして
オリジナリティ溢れる一枚のアートとして確立させた
植田正治という写真家のセンス。
今回の巡回展でまた新たな若いファンを獲得することだろう。
撮影された年代を見て二度驚く。
「少女四態」が日本写真美術展で特選を受賞したのが1939年。
砂丘に配置された人物や静物は、不思議なことに
全体を見渡せば何やらシュールな印象であるのに、
それ一つひとつは何かを語っているようである。
それは微妙な傾きや投げられた帽子の(それにしても帽子などは
どうやってフレームに納まったことを確認するのだろう)
文字通り静止し、空に貼り付いたように居場所を主張する。
時間・空間を軽々と超えて尚、新しい写真世界。

氏が家族をモデルに選んでいる写真が多いことも
昔の良き日本の家族像を彷彿とさせ、また誰をモデルにしても
そこはかとなくユーモアが漂う。
「写真する歓び」を作品を通じて語りかけ、
作家の目が構築した「植田調 Ueda-cho」と称される
独自性あふれる画面は
80年代に入ってさらなる新展開を見せる
菊池武夫とのコラボで発表したファッション写真「砂丘モード」シリーズや
94年の福山雅治のジャケ写などで
その先鋭的で斬新、かつ植田叙情とも呼べる無垢な画像で
“今”を生きる写真家としてしっかり刻み込まれた。

没後10年。200点もの作品を追って見ているうちに
ボクもワタシもこんな写真を撮ってみたいなどという
けしからん欲求がもやもやと頭をもたげてくるに違いない。

不世出の“粋”な写真家である。

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