カルピスな彫刻たち…「月と梯子と虹の~ 櫛下町 祥吾 展」

Category : 現代美術シッタカぶり
7月6日→7月11日【GAKKERY SUZUKI】

ギャラリスト曰く、
「時間が無いと言いながら、個展の看板まで作って…」
初めてという看板付きの個展。

個展と聞けば、発表の場であり、ブログでも何回も書いている
“意志表明”や“決意表明”を披露するステージである。
締め切りに追われ、遅々として進まない作品に悶々としながらも
ある人は徹夜、またある人は朝まで描きながら、
半乾きのカンバスを搬入したりする。
櫛下町さんも決定されてから会期初日まで時間が短かったと聞くが
なんのなんの素敵な「KUSHIGEMAGHI WORLD」が
目の前に展開されているではないか。

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↑長かった山のてっぺんで喜びをわかちあう二人。くれぐれも梯子を落とさないように…

引っ越されたアトリエの大きさに合わせた作品ということで
小気味よい小品がリズミカルに配置され、
観る者の目を存分に楽しませてくれる。
タイトル通りの要素がそこここに散りばめられ、
キーパーソンはうら若い男女。
男女ともに顔は無い、がそこにはささやかだけど愛おしい
それぞれ一幕づつの小さな物語がある。
切なかったり、ちょっと拗ねたり、届かなかったりする二人の関係は
傍から見ると実にたわいなく、可愛らしく、健気である。

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↑欠けた月へ登る階段。さて誰が月を持っていったの?

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↑ごろんごろん…起き上がりこぼしのような磁石かな? 

彫刻である。
誠に失礼かつぶしつけな表現で申し訳ないのだが「工作」との境界の
数ミリ手前で押しとどめているかのような独特の“木彫りテイスト”が
登場する二人を決して深刻にさせず、
伸びやかで若々しき純愛世界を照れもせず、臆せずに表現している。
こうして描ける作家は素晴らしい“機微”の持ち主とみた。
彩色のほどよい加減、台座の朴訥さ。
木の魅力に対して、手を加え“過ぎない”頃合いを良くご存知である。
むやみな作為やあざとさとは遠いところに、
これらの作品がほのかに放つ甘酸っぱさがあるのだ。

ニヒリズムや自虐、破壊、攻撃的な趣の作品の対局にあるかのような
一見、ぼんやりとした印象ではあるのだが
“ここにこそ”希望や喜びがあるのかも知れないと
柄にもなく胸がジーンとするのである。
追いかけようとすると、するっと逃げて、また手招きで笑う少女。
遠くを見つめる瞳は湖のように澄んでいる。
互いが居なくては生きていけない世界なんて
腐れ縁(いい意味での)的関わりが圧倒的に生活を支配している現状から見ると
誠に懐かしく、ああ僕の目も濁ってきたなぁと痛感するのである。

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↑珍しく顔あり。           ↑日本で一番幸せになろうね。 

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↑ほら、二人はちゃんと最後には出会うように生まれてきたんだ。

作家の意向は意向として
センチメンタリズムを忌み嫌う傾向が顕著な個展が多い中で
今回はどっぷりとそれに浸かってやろうじゃないか、などと
オヤジは開き直ったりしてみる。

CIMG2419.jpg

↑一番好きな作品。フラスコに浮かんでいるのはボートに横たわった少女。
彼が上っているのか、降りているのかの梯子には一本のオールが…
この人にはいつか絵本を作って欲しい。


自分の世界を一つの作品で示すことは簡単でも
(つまり創意や意味性は作家によって主導権を握られるわけだから)
互いに囁き合いながら、物語をつむいでいける作品をこうして配置し、
少年少女の恥らむような(決して耽美にならずに)
アーカイブな日々を連想させる個展を成し得ることは
そう容易なことではない。
それこそ櫛下町さんの温かな力量である。

みなさん、恋されてますか…。


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