作家の天命をしかと観る…「川埜龍三 アナクロモノクローム」

Category : 現代美術シッタカぶり
7月9日→7月19日【京都万華鏡ミュージアム姉小路館アートギャラリー】

祖母。
僕には記憶どころか意識下では“存在無き近い先祖”である。
会場の中央に威風堂々と犬を従えて屹立するグラン・ママ。
おそらくは実際より一回り、
いやふた回りは大きく彫刻されているであろうと思いきや
なんと等身大という。
80代でのこの立派な体躯はさぞ際立っていたであろう。

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この初めてのギャラリーへ足を踏み入れた直後に
僕を包む、いや丸吞みしたのは
“予断なき造形”とも言うべき驚愕の作品たちだった。
過去も含めたモノクロームな色合いの作品たちは
親しみやすさの中にある種の崇高さ導かれた風格さを漂わす。
DMのイメージにも使われた読書する殉教者のような作品。
「孤独なフラクタル」と名付けられたその作品を
見たいが為に、川埜龍三という作家名さえ知らずに
これらの彫刻と出会ってしまった僕はそのことを痛烈に恥じた。
これほどのクオリティとこれほどの若さを備えた
作家を今まで知らずに居たことを…。

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先に触れた「グラン・ママ」は
強烈な個性の持ち主として、また厳しくも自らの達観を作家へ投入した
いわば運命的にそこに存在し、
“創意の起点”を提供してくれた人である。
「仕事が楽しいのならずっと続けなさい」
至ってシンプルなこの言葉によって、
作家は自分が選んだ“仕事”への辛くとも快い没頭感を得たであろう。
共働きの家庭で必然的に深くなる祖母との関わりから
おそらくは様々な英知や判断、示唆を与えてくれた
作家にとってはマリアのような存在だったのではないかとふと思う。
単なる血縁としての祖母を超えた畏敬の念も抱いていたのではないか。
写真でしか拝見できなかったが、
3メートルにもなろうかという壮大な作品「グラン・ママ2007」を見ていると、
なるほどメキシコのシャーマンが祖母に酷似していた(またその逆)という
“発見”も偶然とはいえ、奇縁を感じ、また同様に作品も荘厳な雰囲気に包まれている。
グラン・ママ亡き後、作家は彼女へのオマージュを込めた
「葬送」の脚本家・舞台監督となり、永遠に生きる作品として現世にその“意味”を残した。

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作家のブログでの音楽のカテゴリー。
相当にハマっておられる南米音楽への造詣の深さが伺える。
僕も大好きなエリアミュージックなのでとても楽しく読ませてもらう。
10年以上前にふとしたきっかけで聴いた音楽は
作家の魂にピンポイントにグルーヴを突き立てたに違いない。

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川埜氏の2009年 第10回ハバナ・ビエンナーレ出展に際してのブログや
関連企画のサイトなどを見てみると
キューバと日本との国交80周年とは言え、彼の国は確かに遠く、
しかも初めての渡航先がキューバというディープなエリアだけに
作家が受け取った旅の所産は手に余るほどのものだっただろうと察する。
作家として訪れるということは純粋にその国と
いや44カ国の国と自分の芸術をパスポートにして関わるということである。
情報も乏しく、わからないまま行ったというキューバから
持ち帰ったものの大きさは計り知れない。

祈りと慈しみと愛を乞う彫刻たちの面差しはどこか物憂い。
それは僕たちに何かを伝えるべく、今ここに居る。(在る、ではなく)
レイブン(大ガラス)という“点”の作品群はやがて一つの線となって
連続性を帯びながら成長していくに違いない。
足掛け10年も制作にかかっている大作も
作品である「彼」の変容や熟す様に
作家は「きちんと作らねば」と意志を新たにする。

話を伺う度に驚く事実と出会うが、
作家は“独学”で彫刻技術を学んだ。
彫刻をそこに“座”する、そして“存続させる”ための技術も全て現場で学んだ。
弛み無さと闊達さを高いレベルで維持しながら
何物にも捕われないフリーフォームな姿勢を貫く強さが全ての作品にあるのだ。

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会場を去る時に自分にとって「天命」と言えるものは果たして何か…
いや、あるのか……そんな出ない答えを探している自分と会う。
自分の言葉の拙さや空しさを滲みるようにかみしめた展覧会だった。

そして…作家・川埜龍三氏。彼はまだ34歳なのである。

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