日本的なるものへの奇異なオマージュ…「束芋 断面の世代」

Category : 現代美術シッタカぶり
たばいも

7月10日→9月12日【国立国際美術館】

中身はともかく地上部分の造作は
安っぽく醜悪に映るこの美術館。
外界から遮断された空間はここをどことも特定させない。
広い会場を贅沢に使った展示で
多少“もったいつけた”感じがしなくもない。

この奇妙な名前の作家を聞いたのはいつ頃だろう。
なんでも「田端の妹」でこう呼ばれていた本人には昔から馴染み深い呼び名。
もちろん彼女が過大評価されているといった見方も承知の上。
現代美術にあって評価軸の違いほど面白いものはないから。
ビエンナーレ束芋というくらいだから(言ってるのは僕だけだが)
多少のヤッカミはあると思う。
それにしても若い人には絶大な人気である。
見ればそれとわかる美大系の学生さんとおぼしき人多し。

タイトルの「断面の世代」は「団塊の世代」のレトリックだとは思うが
なるほど言い得て妙である。
「個を尊重する存在であり、その個を断面として捉えた時にペラペラな二次元の
断面を集積していくことで出来上がる幅太の三次元世界により新たな世界が見えてくる…」
確かに束芋は1975年生まれの団塊ジュニア(これは大雑把な括りで)である。
いわゆるロスジェネと呼ばれる世代。
考えてみると僕がブログで紹介する作家たちの年代も大いにこれに重なる。
悪く言えば「貧乏くじ世代」は人生の選択時期を不幸なタイミングで
いらだちと暗澹たる空気の中で送った。
“割が合わなかった”彼らの「他者との関係性」は
あらゆる分野でテーマとして取り上げられることが多い。
得てしてこういう経験値が表現欲にプラスに働くことがある。

若い人たちは“うまく運ばない”束芋の経歴に共感を得たり、
“成功者”した芸術家・束芋を自分たちの代弁者と見立てているのかも知れない。
推薦入試で落ち、一般入試で落ち、補欠で合格した
京都造形芸術大学の「教授」に26歳の若さで就任するも
その“立ち位置”に悩み辞任。
その年に第13回五島記念文化賞受賞だなんて、かっこ良すぎる話ではないか。

さて本展は7年ぶりの個展で、新作5点を発表。
ただ基本的なスタンスは「にっぽんの台所」とは変わりない。
さらなる発展形であり、“切実にやっかいな隣人”現象を
シニカルに描き、その“冷ややかな暴力性”と“愛すべき俗物”の
いと哀しい、束芋的スパイラルワールドが展開されている。
10棟と書かれた団地の各部屋で起こっている(であろう、ないし起こる可能性のある)
様々な「生活の癖」の離合集散を、天井に映ったアニメーションを
仰向けに寝ながら観るのである。(とても心地よい!)
それ自体の描写や描き込みは
確かに“かつて”の先人が作り上げたテイストも伺える。
束芋は“日本(人)の持つ普遍性”を緩やかに毒も含んだ表現で描く。
高度情報化社会とは手の平の携帯と
パソの画面上に飛び交うソースだけで事足りるものでもないのだが
結局人々の間には“塞がれた”見せかけだけの社交辞令で充分に
生きて行けるのだという確信がある。
「団地層」「団断」「油断髪」「ちぎれちぎれ」「BLOW」の新作アニメーション5点と
新聞小説「惡人」の挿絵原画が今回の展示内容。
発表当時の小説の挿絵は日々、読者に不穏な空気をもたらしてくれただろうほどに
奇異特異なものだ。
乱歩調とでも言おうか。

また、それぞれのアニメーションのカラーテイストが
北斎の版画の色調であることは明快で新鮮である。
そのこともビエンナーレで海外から注目される要因にもなっているのだろう。
あくまで「手描き原画」であることが全てだが
アニメーションの“見せ方”も斬新で
この人は多面的に捉える能力に長けているなぁとつくづく感じる。
“はらわた感”がお好きな方にも満足していただけると思うが
小さな子供にはちょっと刺激が強すぎるかも知れない。
なお9月4日(日)は無料観覧日。ぜひどうぞ。

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はじめまして。
お写真、とても素敵で、ぜひリンクを張りたかったのですがFC2ユーザーでないため、張れず・・
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