知覚を探る装置たち…「 Trouble in Paradise 生存のエシックス 」

Category : 現代美術シッタカぶり
7月9日→8月22日【京都国立近代美術館】

大仰なタイトルに及び腰になるが、
美術展としては画期的な企画だとコメントされた記事を読んだ。
夏休みの課題のネタ探しに来館したとおぼしき小学生も多い。
しかし彼らも家に帰って、さてどうまとめたものか悩むであろう。
テーマが「生存の倫理学」では太刀打ちできそうもないし…。

「芸術作品の鑑賞」という絶対的命題を心して来館された人には
鑑賞はおろか、どこにも芸術らしきものは見当たらない。
しかしずっと遠くから、そう、もっと、もっと、離れて…
その辺からまず観てみる。
なんだか「生きていくための」芸術の輪郭が見えてこないか。
もうちょっと近づいてみると
変な装置、いやこれはオブジェか…それとヘンテコなカタチのオモチャ。
それに変な音…
日常の僕らの生活にはまず関わりが無さそうなこれらの芸術たちは
しかしよく考えられた“人に接着したい”人なつっこいものなのだ。
そこには作者の厳然とした「理由」があり「調査」があり「行動」があり
その結果としての「作品」がある。

概要としては「生命、医療、環境、宇宙における現代の先鋭的なテーマに
芸術的アプローチを試みた展覧会」となる。
京都芸大が創立130年を記念して企画したもので
芸術家と研究者の壮大なるコラボレーション作品の“展示”と考える。

蜂の嗅覚を利用してあるパターンを認識させ、
人間の疾病を口臭で診断するガラスの球体。
見ようによっては充分にガラス彫刻なのだが
そのケミカルな要素によって実験器具のようにも見える
スサーナ・ソアーズ氏のプロジェクト。

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芸術実験として芸大とJAXA(宇宙航空研究開発機構)が共同で実施した「宇宙庭」は
無重力状態の宇宙船の中で植物をタネから育て、庭を作り散策(!)鑑賞しようとする試み。

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かわいい3つのロボットが茶室の主。
カタチはそれぞれトースター、ミキサー、ラジオ。
茶室は全ての壁が縦型のブラインドになっていて
小さなモニターに映る自分の顔で精一杯の笑顔を作ると
スマイル指数によって壁がウインクする「未来の家政学」。
ここではよりロボット化された家電製品と人間との関わりをテーマに据えている。

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ケースの中の木の幹にささったマイクから
ヘッドフォン越しに聞こえるのは木食い虫の音。
作曲家デビッド・ダン氏の「バイオ・ミュージック」は
音楽を作るのではなく世界を聴覚によって認識するというスタンス。
木に差し込み樹皮の中の音を聴くためのヴァイブレーション・トランスデューサーを
作るワークショップも行われた。

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大きな筒の中に体を横たえ体験者はいろいろな光の投影と変化する水の音を
特殊な装置によって見聞きする。
その間に脳血流測定装置で前頭葉の血流測定を行い、変化を解析。
体験者が「心地よい」と装置が診断した画像や音にデータを生成変化させ
再びフィードバックする「光・音・脳」。

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作者自身が自閉症でありながら優れた動物学者であるテンプル・グランデンは
自閉症患者が不安を鎮める手立てとして、体に強い圧迫感が欲しくなるという感覚を
証言を元に「ハグ・マシン」として試作化。
セキュリティ・ブランケット「ライナスの散歩(ネーミングが最高)」である。

美術館での「触れない」「大きな声を上げない」「走らない」の3禁則が
観客の身体を“置き去り”にしていることやもっと身体性を作品に反映させるべく
「盲目のクライマー」という巨大な多面体フィールドを制作した石原友明氏。
裸足になって木製の山に登る。

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高橋悟氏+松井紫朗氏の「二重軸回転ステージ」は
傾斜2°をつけたゆっくりと回転する直径8mの円盤状のステージに様々な画像が投射、
ゆっくりと歩き回り、また立ち止まりながら
自己の心と体を時空に「ほどく」作品。
乗ってみると緩やかな傾斜のせいで波打つような動きが体を通る不思議な体験。
目的はというと
「宇宙滞在・認知症・庭園・発達障害の研究に基づく
トポロジカルな時空と記憶形成の実験」と…さっぱり…だが面白い…。

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ひと言で言うなら…と締めくくりたいところだが、いかんせん浅学の僕には
言える語彙すら持ち合わせていないのが現状である。
何はともあれ「芸術鑑賞」をするのはまぎれもなく人間であるから
自らを「取り込まれたモルモット」として経験し、参加し、
観て来たものを俯瞰できるような余裕が、人生を楽しくするのではないか、
などとシッタカぶるのである。






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