今敏氏の大いなる所産…「東京ゴッドファーザーズ」

Category : 追悼…
今敏氏が膵臓ガンで逝く。
46歳という若さ。
これほど医学が進歩していても
ガンは次々と才人たちを彼方へ連れ去ってしまう…。
何らの理由なく…むごい仕打ちである。

mainvisual.jpg

「東京ゴッドファーザーズ」
毎年クリスマスが近づくと観たくなる
2003年公開の今敏氏監督・原作の傑作アニメ。
当時、滅多に買わないオフィシャルブックを購入。
かなり読み応えのある100ページ近いもの。
改めて見返してみると、
このアニメーションのクオリティの高さに驚かざる得ない。

クリスマス話に付き物の「奇跡話」ではあるが
シンプルなストーリーながら、3人のキャラクターが際立ち、
息もつかせぬ展開で、ぐいぐいと観客を引き込んでいく。
江守徹、梅垣義明、岡本綾がそれぞれ
万年酔っぱらいオヤジ、ドラッグクイーン、家出女子高校生という
役どころを見事に声優として演じている。
声優としての難しさを江守が語る。
アニメは必ずしもセリフの長さと登場人物の口の動きは同じとは限らない。
短い間に多くの言葉をのせていかなければならない時もある。
これは役者というよりもうテクニックの領域で
この相反する「技術的なものと心情を込める声描写」との
折り合いの付け方はかなり難しい。

何より驚くのが背景のディテールの細かさ。
もう執拗にロケをして一瞬のコマでも仔細にモノや街並の表情を作り込む。
世界で数々の賞をものにした理由はここにもありそうだ。
アニメーション制作は「アニマトリックス」「メトロポリス」などで
世界的に名の知れたマッドハウス。
ジブリとは全く別の意味で突出したテクニックとアイデアを持つ集団である。
アニメが本来的に好む宇宙、魔力、魔法といったノンフィクションな題材に
おいては何を描いても背景は「話としてのリアリティ」を補足する具材でしかない。
東京の街並、それも雪の積もる風景、夜の雑踏、ホームレスの住処などは
その背景そのものが貧弱だと全体を支える骨格そのものが揺らいでしまって
せっかくの話が嘘臭くなってしまう。
どこかで見たような風景がまるでデジャヴのように現れる時、
僕たちはここに登場する全ての“役者”たちに共感するのだ。

アニメ1

アニメ2

クリスマスの夜に捨て子。
その親探しに奔走する旅はやがて3人の過去をやんわりと残酷にあぶりだしていく。
街並はいつになく華やかで人々の心も浮き立つこの日、
“裏側”の住人たちは、自分たちの不甲斐なさや情けなさに帰結しながらも
前向きにたくましく生きている。

そう、幸せとは何か?
そんなささやかな問いかけが
「裏クリスマス」とも呼べるこの話に含まれている。
これは実にキチンとしたアニメーションである。

本来ならドキュメント対象とするこのブログだが
先日の監督の死去にともない、
敬意を表し例外として本作を取り上げた。



にほんブログ村 美術ブログ 現代美術へ

↑ポチッとくれたらありがたき幸せ♪
スポンサーサイト

Comment

今監督 まだまだいっぱいお仕事してほしかったです。
本当に残念です。
私もこの作品大好きでした。
非公開コメント

58カ国語に翻訳
English
お越しいただきありがとうございます

den

………………………………………
アート・ドキュメント・ブック・
ミュージック・演劇・ダンス・
朗読・時事・ひがみ・そねみ・
やっかみ・おせっかい…
などなどシッタカぶって書きちらかしては
自己嫌悪な日々をゆらゆらと
過ごしております。
「シッタカブリアンの午睡」
「デラシネ光合成」をこのたび一本化。
言いたがり、やりたがり、ノリたがりな
のんのんとしたブログにお越しいただき
ありがとうございます。
………………………………………

ここから、また…
最近の書き散らかし…
こんなこと書いてます
こちらへもどうぞ!