正常との境界を探る“観察映画”…「 精神 - Are you sane? - 」

Category : ドキュメントDVD
精神

監督:想田 和弘

いわばセカンドメニューとして
ドキュメンタリーを取り上げて勝手にシッタカブる
当ブログだが、いよいよスゴいのが登場。
果たして今まで観て来たドキュメントとは何なのだろうか。

釜山国際映画祭最優秀ドキュメント賞
ドバイ国際映画祭最優秀ドキュメント賞
香港国際映画祭優秀ドキュメント賞
マイアミ国際映画祭審査員特別賞
ニヨン国際ドキュメンタリー映画際 宗教を超えた審査員賞

この受賞歴も破格だが、
この画像にはナレーションも音楽も全くない。
ただただ“実在”の人が“語る”ドキュメントである。
その実在の人たちとは「精神を病んでいる」現在治療中の患者たちである。

友人や同僚、家族にさえ自分の病気を隠して生きる彼らに
取材許可など求めても応じる道理など無い中で
よくこれだけ“素”の画像を撮り得たものだと感服。
事前のシノプシスも一切なく、リサーチも最小限にとどめ、
セットアップも極力なく、文字通りガチンコ手法。
「モザイク無し」の患者へのクローズアップと
彼らが語るショッキングな告白の数々…。

現場は1997年設立の岡山にある外来の精神科診療所。
障害者が病院ではなく地域社会で暮らすというコンセプトのもと、
働いて賃金を得られる場を提供している。

映画は小泉の冗談のような置き土産「障害者自立支援法案」が可決された
2005年秋に撮られ始めた。
生活保護が停止している間に収入が無く、
夜な夜な街へ出向き、体を売って生活していたと語る巨漢の女性。
もっと美人だったのよと語る彼女が差し出す一枚の写真には
確かにスマートな頃の愛らしい女性がにこやかに笑っている。
また結婚して子供を産んで育児ノイローゼになり、
我が子の首を締めて殺してしまった女性も
カメラの前であるがままを語る。
妻から母へ、母から殺人犯、そして離婚。
緩慢な動作と他人事のように淡々と静かに語る彼女も
精神科に通う患者である。
両親が亡くなったら自分はどう生きていけばいいかと
切実に訴える患者。
自分の頭の中にいる「インベーダー」が何かをやらかそうとしている…。
それは5年に一度ぐらい深刻で絶対的な声で彼を操作する。
これで罪を犯し、裁判所で「インベーダーがやれと言った」と言っても
誰も「そうですか」とは言わないだろうから
罪は罪としてつぐなう覚悟だ、と語る男性も
今、何も犯しているわけではない。
しかし予兆を脅迫的に受けてしまう“抗えない”自分が居るのである。

固定概念、先入観を捨てて彼らを社会の弱者とも異端者とも断定せずに
また賛美もなく、ただひたすらに心の闇にカメラは向かい、吐露させる。
主観なき映像こそが、もしかしたら観客に向けて最良の
ドキュメントなのかも知れない。
現実とは「その件」に関わりない人間には「向こう側の現実」でしかない。

果たして、ここに登場する患者たちと僕たちとの間の“見えないカーテン”は
どれほどの薄さがあるのか…。

「あなたは正気ですか?」
このサブタイトルが示すものは、
今の時代にあってこそ、万人に向けられた深い謎になる。



※2010年に完成予定の劇作家平田オリザと青年団を被写体の
観察映画第3弾「演劇(仮題)」を撮影中とのこと。乞うご期待!

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