戦争が生んだ希有な母娘の確執…「黙って行かせて」

Category : 100円本雑読乱読
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4年ほど前に読んだ本であるが、その衝撃は今も鮮明によみがえる。
著者はポーランド生まれの現在71歳の女性作家。
幼い頃に母が家族を捨てて、ナチスの親衛隊員に志願。
この実話はその幼い女の子であった著者が
50年ぶりに母に真相を聞くというショッキングな内容である。
ここで大方の読者は、幼い娘、弟、そして夫を捨ててまで
ナチスに荷担せざるおえなかった母の懺悔と贖罪、
そしてそんな時代に翻弄された母を許す娘というシナリオを描くだろう。
しかし、予想は裏切られる。それも唖然とするような…。

老いて90歳になろうとする母は老人ホームにいた。
なぜ、自分たち家族を捨てたのか、
ナチの犯罪にどう関わっていたのか、
なぜそういうことができたのか、
やったことについて、今はどういう気持か…

母は答える。100%の確信と自信に満ちた話しぶりで…
「ユダヤ人に全て責任があるんだよ。彼らは絶えずゴタゴタと
ドイツの邪魔をしたんだ。その上、新しい紛争を招こうと
国際的陰謀を企んでた」
悪びれることもなく、残虐非道な生体実験の手伝いをしていたこと、
ガス室で死ななかった囚人を生きたまま焼いていたことなどを「自慢」するのだ! 
ヒトラーへの忠誠と敬愛、ユダヤ人への憎しみ今もなお、もち続ける
ナチ女性加害者の存在とその声が、初めて本として公になったのである。
耳をふさぎたくなるような恐ろしい証言。鬼畜のなせるそれらの所業を、
こうもスラスラと口から出てくることの怖さは例えようもない。
戦争によって、引き起こされる事実はさまざまな形で表現され、
告発され、示唆され、教育され、二度とあってはならないと
強くメッセージされる。
しかし「戦争」とは何千人もの狂人を生産する巨大装置だ。
ドイツでテレビ出演した著者が本書でも明かさなかったエピソードがある。
それは母と会った時に、
当人からナチス親衛隊の軍服を着てみるように催促されたこと…
これこそ、著者の堪え難いトラウマだった。
徹底的に母を糾弾する著者の勇気が
犠牲者のために戦うという姿勢を明確にしたのである。
是非若い人に読んでいただきたい本である。
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