高速を走り抜けた車から一人が飛び降りた時…「ドアーズ/まぼろしの世界」

Category : ドキュメントDVD
まぼろし

監督:トム・ディチロ

短い生涯を閉じたバンドはいくらでもある。
しかし中でもドアーズほど伝説的に語られるバンドはない。
もちろんジム・モリソンという
(僕にとってはやや大仰に語られるロック・ヒーロー)
巨大にシャーマン化した人間像そのものがドアーズとほぼ
同義語で語られることもその一因だが、
彼らはまぎれもなくロック・バンドであり音楽で表現するユニットである。
しかしこのベースレス(当初のみ)の
不思議で奇妙なメロディラインを特徴とする楽曲を聴くたびに
ドアーズはドアーズしか居ないということを思い知らされるのだ。
それは1967年のビルボード年間(!)チャート2位というレコードを誇る
一番有名な曲「Light My Fire」を聴くだけでわかる。
オルガンのレイ・マンザレクの才能とセンス、バッハへの想いが
当時のロックには有り得なかった味付けを見事にこの曲に反映させている。

新しいロックを創るんだという気負いも高ぶりも
ドアーズには無かったような気がする。
モリソンの詩と歌、レイたちの演奏が結果的に新しい表現として
支持され、熱烈なファンを生んだのだ。

ドラッグがカウンターカルチャーの武器だった頃に
詩人、ミュージシャンのモリソンにとってドラッグや
後におぼれていくアルコールとは一体何だったのか
このドキュメンタリーはそれを語らない。
いやモリソンを語るすべを持つものなど無いのかもしれない。
モリソンがモリソンたりえるキャラクターでいられたのは
ひとえにレイ・マンザレク、ジョン・デンズモア、ロビー・クリーガーの
おかげである。そのことは大いに画面から語られる。
彼らの寛容さはそのままモリソンの才能を認めることだった。
ステージで歌いながら突然崩れ落ちるモリソンを
優しい目で見つめるメンバーたち。
失神したように動かないモリソンの代わりに
ヴォーカルをとるレイ。
ドアーズを創ったのがモリソン、だとすれば
潰したのもモリソンである。
この明快な答えはたった54ヶ月で証明された。
1967年から1971年までをモリソンに振り回されながらも
ただの一度もメンバーチェンジもなく、ドアーズとしてこれたのは
この“偉大”なる3人が自身のテンションをキープしてこれたからだ。
モリソンの顔はどんなに威勢が良くても
暴れていても、下品な言葉を吐いても、どこか寂しげだ。
禁止されているフレーズは言わないことを4人のメンバーが了承したにも関わらず、
結局生放送でオリジナル通りに歌ってエド・サリヴァンをカンカンに怒らせても
メンバーはさして驚かなかったに違いない。
(ジムならそうするさ…僕たちはしないけどね…)
僕にはそんな風に思える。

レコードを聴いてまさかと思うのは
モリソンが歌に自信が全くなかったという事実。
ワンフレーズ歌うとすぐに客席に後ろ向きになり、
はにかんだような表情を見せながら揺れているモリソン。
歌のヘタさを自らが自虐的に語るシーンもある。
そして譜面が読めなかったこと…それでいてあんな曲を…

このドキュメントはよくある家族や同級生へのインタビューもなければ
今はすっかり老いた往事のレコード会社の偉いさんや
関係者がシャシャリ出て懐かしそうに語る場面も無い。
まずこのドキュメンタリーはそこで成功しているといってもいいし、
ナレーションのジョニー・デップはすでにドアーズそのものに塗り込められている。

亡き人を美化したりもしない。
わずか数年を猛スピードで駆け抜けたロッカーたちを
淡々と映しているに過ぎないのだが、
そこにあるギャップとは平和で穏やかに成功したいと願う人と
最後まで自分の本当の正体を探しあぐねた不器用な人との
それでも優しくて哀しい人間関係なのだった。

ジミ・ヘンドリックス、
ブライアン・ジョーンズ、
ジャニス・ジョプリン、
カート・コバーン、
そしてジム・モリソン…

共に今はいないこの5人に共通していること。
それは5人とも27歳という若さで彼岸へ連れ去られたこと。



これで終わりだ 美しき友よ
これで終わりだ ただ一人の友よ
僕らが立てた緻密な計画はこれで終わる
すべての戦いも終わる
安全もなく驚きもなく終わる
僕はもう二度とアナタの瞳を覗き込むことはないだろう

無制限に自由に何でも描いていいって言われても
一体何が描けるっていうんだ?
誰かの手がどうしたって必要なんだ
この絶望的な土地では
容赦ない痛みに愛も夢も見失って
子供たちは気がふれてゆく
まるで夏の雨を待つように

街外れは危険に溢れている
王様のハイウェイに乗りなさい
金鉱の中の不可思議な風景
王様のハイウェイに乗って西の国へ
蛇にまたがって
湖へ 古代の湖へ
その蛇の長さは7マイル
年老いて、冷たい皮の
蛇にまたがって
西の国はとても暮らしやすい
土地を手に入れて
そこで休息をとろう

青いバスが僕らを呼んでいる
青いバスが僕らを呼んでいる
運転手さん、さぁ連れて行ってくれ

夜明け前に殺人者は目覚め、ブーツを履いた
彼の顔はまるで古代人の面のようで

彼は姉妹の住む家にたどり着き
彼の兄弟と、そして彼自身に対面した
それから
ドアの前に立ち中をのぞきこむ
父さん あんたを殺したい
母さん あんたを犯したい

今こそそのとき
今こそそのとき
青いバスの裏で僕と会いましょう
青いバスに乗ってブルー・ロックを演ろう

コロス コロス コロス コロス コロス

これで終わりだ 美しき友よ
これで終わりだ ただ一人の友よ
自由はアナタを傷つける
アナタは決して僕にはついて来ない
柔らかなウソも微笑みもこれで終わる
僕らが死のうとした夜もこれで終わる
これで終わる

(The Doors/The End)



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