とっぽい、いたずらなクロワッサンたち…「プチ・ニコラ」

Category : 100円本雑読乱読
プチ1

1973年第一刷発行。
高校生の時にまず、この本を手にとることは無かったろう。
2年生の2学期登校初日に家出した青年の周りには、
高橋和己や吉本隆明にかぶれた連中がうようよ居て、
口角泡を飛ばしてあーでもないこーでもないと
聞く人が聞けば別な意味での「とある自己理論武装」の花盛り。
いつ、どこで手にしたか覚えていないくらい昔のこと、
フレンチ・ガキのニコラに出会った。
物語の舞台は、テレビ、電話が一般家庭にようやく普及した
古き良きフランスのある一地方都市。
不思議なことであるが「核家族」である。
最近のニュースでフランスは少子化を克服した、というような話だったが
パパ、ママ、ニコラの三人家族にしたのは、
シンプルな構成ゆえに主人公であるニコラを一層、
際立たせようとした狙いがあるように見える。
妹や姉がいたら、話に弟や兄の主観を交えなければならなくなって、
単純な話に水を刺す結果にも成りかねない。
さて、このニコラ、とんでもなくいたずらっ子で、
同時にしたたかさ、とっぽさを持ち合わせた、しかしながら市井の子である。
このハードカバーは笹本孝訳であるが、
後に読んだ文庫本の方がはるかに訳が優れていた。
この頃、これほどに「訳」の違いが
読むテンションの「差」に直結するとは思いもしなかった。
その最初の本であったと記憶している。

何より挿絵のサンペのいきいきとした「引き算」の線が伸びやかで、
しかもコンパクトである。
行間を感じ取ることのできる数少ない挿絵の傑作だ。
陳腐な表現で恐縮するが、子供は可愛く、残酷で、冷たく、温かさを小さな肉体に宿す
「一過性」の生き物だと思う。
そして通過儀礼のように、それらは音もなく消え去り
システムという強烈な「縛り」に嫌でも放り込まれる宿命を(しばらく)たどる。
「それ以前」と「それ以降」で分けるならば
「それ以前」に思いを馳せるのは当然の快楽だ。
そして「それ以前」があるから「それ以降」があるわけだ。
そう、インデアンサマーな或る日、
大人が心のバルコニーに座って、クロワッサンでも浸しながら
読むうってつけの本である。

「ピーナッツ」も示唆に富んだ大人の読み物だが
映画同様に、このフレンチ独特の味わいは絶妙だ。尾を引くんである。
いわゆる「エスプリ」というやつである。
これまでに本にならずに遺族の元に眠っていた続きが
2004年にフランスで『プチ・ニコラ未刊行作品集』として発売されるや
たちまち65万部以上を売りあげる大ベストセラーになったという。
いかにフランス人にとって、愛おしむべき作品であるかを数字は語る。
原書で600ページを越える作品が5冊分、発売されている。
まだまだ楽しめるというわけだ。

さて、ニコラの同級生の連中を紹介しよう。

プチ2

プチ3



【上段左から】

ニコラ……主人公。おっちょこちょいだが善良なパパと口うるさいが優しいママの間で幸せな毎日をおくる。ニコラの行くところ波乱は絶えないが本人は真剣。

ジョアシャン……しょっ中ぶつぶつ言ってるが、悪のりは得意。みんなの騒ぎをよそに、せっせと探し物などをする。

メクサン……脚がすんなりと長く、けっとばすのが得意。やや理屈っぽく皮肉っぽいところあり。すぐ悪のりするタイプ。

クロテール……学級の劣等生。先生の質問を受ける度、バツを受けてお休み時間を取り上げられる。ジョフロアと並んで家にテレビのあるのが自慢。

アニャン……学級の優等生。先生の大のごひいきだがメガネwpかけているので、やたらになぐるわけにはいかない。お休み時間も、ひとりで勉強のおさらいをしている。

【下段の左から】

ジョフロワ……お父さんがたいそうお金持ちで、欲しいものを何でも買ってもらえるために、しょっ中奇抜なものを学校へ持ち込んでは騒ぎを起こす。ビンタが得意。

ユード……腕っ節が強く、学級仲間をぶん殴るのを趣味とする、ちょっと迷惑だが茶目っ気たっぷりの暴れん坊。学級仲間の乱闘はほとんどこの生徒の一発が契機。

リュフス……お巡りさんの子で、いつも警笛を宝物のようにポケットに入れている。家庭のことをとやかく言われると、人が変わったように怒り出す。

アルセスト……いつも何かを食べている食いしん坊。そばへ寄るとクロワッサンの粉が飛んでくるが、ニコラとは大の仲良し。デブと言われるのを何よりも嫌う。

どう、読みたくなったでしょ…
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Comment

さっそくクロワッサン片手に読みたくなりましたよ。

挿絵も本の重要な役者さん・・・
とても、キュートな子供たちですね。

本から離れてた私・・・ありがとうございます。

それにしても、denさん、文がお上手ですね。びっくりしてます!!

→さびしんぼさん

今現在は文庫で何冊かシリーズで出ています。
僕も書いてて、もう一度読みたくなりました。
コメありがとうございます!
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