コドモは自分たちで世界を変えることなんかできない…「ファヴェーラの丘」

Category : ドキュメントDVD
ファヴェーラ

監督:ジェフ・ジンバリスト & マット・モチャリー


コドモたちは
オトナが作ってしまった世界の中でしか生きられない。
オトナが契約し、オトナが履行し、オトナが約束し、
オトナが反故にし、オトナが造反し、オトナが後悔し、
オトナが懺悔したとしても、
コドモは黙ってそんなオトナたちを見ているだけである。
そしてオトナはオトナであるというちっぽけな経験則と構成力を振りかざしながら
コドモの未来を奪っていく。

コドモが辛く生きなければならない国ほど哀しい国は無い。
ストリートチルドレンが増加する現実というのは一体何なのだろうか。
この連鎖を断ち切る術はもう無いのだろうか。
一度彼らを“作ってしまった”社会が元に戻ることは不可能なのだろうか。
神はその過ちを修復不能な境地にまで追いつめて
それを教訓とすることを望んでいるはずなのに…。
しかし戦争や抗争や衝突は繰り返され、横目で見ている人間以外の生物は
この愚かしい二本足で立つ化け物を
おそらくは冷ややかに遠巻きに見ているに違いない。
もし彼らが言葉を発することがあったなら
この世は罵声と怒号で満たされ、
音という音はその声にかき消されてしまうかも知れない。

さて、この映画はストリートチルドレンの実態を晒すものではない。
むしろもっと悲観的な結末を約束された世界へ、
否が応でも自らをそんな宿命の元へ走らざる得ない
コドモたちの哀しい現実だ。
コドモたちがなりたい、いやなるであろう姿はギャングの形をしている。
銃を持ち、当然グループ間の抗争の果てに命を落とすことだってある。
もっと最悪なのは腐敗した警察によって無差別に殺されるという
目を覆いたくなる現実。

オトナの戦争にコドモが巻き込まれて死ぬというような単純なものではなく、
治安を守る立場の軍警察がやりたい放題の世界が繰り広げられる。
ここはリオデジャネイロの“もう片方の顔”であるスラム街「ファヴェーラ」。
あの美しい海岸沿いのゴージャスな別荘や豪邸を見下ろすように群落がある。
まるで九龍のはらわたを外へ引っ張り出したようなスラム。

このドキュメントの主人公はアンデルソン・サー。
組織のボスが警察官を殺害した報復としてその警察に弟を殺されたアンデルソンは
骨の随までファヴェーラを知り尽くしている。
この街に住む者への就職差別、いつまでも貧困のままから抜け出す為の
ギャングへの道。
これはどこまでいっても負の連鎖。

音楽が人生を変える大きなきっかけになり得るということは
殆どが個人レベルでの話になるのに、ここファヴェーラでは
暴力や抗争、憎悪、そして死への道を音楽とダンスが阻むという絶大な効果を示す。
それだけ彼らには“自分を取り巻く環境を否定した生き方を選択するきっかけ”が
なかったのだ。
なおバンドである「アフロレゲエ」などの詳細は映画のオフィシャルサイトをどうぞ。

アンデルソンは彼らの「相談人」であり「世話人」であり、
そして「救世主」であり、
サーフィンによる不慮の事故で負った、頸椎骨折というダメージから
見事に復活した「軌跡の男」だ。
映画は主にアンデルソンを軸に展開していく。
もっとコドモたちの表情や本音を引き出す部分があっても良かった。
が、それにしてもアンデルソンの実行力、神懸かり的な存在は
政治家(どこでもロクな仕事をしていないらしいが)など
足元にも及ばない(すでに投げている)「リオのリアリティ」を
すくい取り、何をすべきかを明瞭に指し示した。

2014年FIFAワールドカップ、
2016年オリンピックの開催地としてブラジルは
確かに都市としての「正常度」「健康度」「発展度」「安全度」などをアピールし、
南アフリカ共和国と同じ様なリスクも孕みながら
これから変貌をとげるのかも知れないが、
今まさに混沌としたエジプト同様、
各国にある、一枚の壁、一本の道、川、地区の向こうに
スラム街を抱きかかえている都市というのはやはり、
まず最優先課題として、もっと国家レベルで解決せねばならない“義務”がある。

自分の国を支えていくのは今の政治家でも資産家でも、
ましてや外資でもなく、まぎれもなく
彼らコドモたちなのだから。


↓ポチッとくれたらありがたき幸せ♪
にほんブログ村 美術ブログ 現代美術へ 


スポンサーサイト

Comment

日系人のボランティア団体が主催するお祭りを見に、サンパウロ郊外のファベーラに行った時は、お祭りだけに、「平和」でしたが、リオの裏路地を抜けた時は、見えない視線に皮膚がピリピリと緊張しているのを感じ、中南米旅行中でトップクラスの警戒モードに入りましたね。

ブラジルは「楽しい」やら「恐怖」やら、なんでもかんでもドドンとくる国でした。

to キィヲさん

うわぁ、ファベーラに行ってきたんですねぇ…すごいなぁ。
そうそうキィヲさんはチューナンベラー
(コレ今作りました。中南米フェチの意)でしたね。
やっぱり…視線を感じるという経験は
日本ではそうあるもんじゃありませんから…

いやぁ、今度話してくださいよ!
酒でもヤリながら聞きたいなぁ…
非公開コメント

58カ国語に翻訳
English
お越しいただきありがとうございます

den

………………………………………
アート・ドキュメント・ブック・
ミュージック・演劇・ダンス・
朗読・時事・ひがみ・そねみ・
やっかみ・おせっかい…
などなどシッタカぶって書きちらかしては
自己嫌悪な日々をゆらゆらと
過ごしております。
「シッタカブリアンの午睡」
「デラシネ光合成」をこのたび一本化。
言いたがり、やりたがり、ノリたがりな
のんのんとしたブログにお越しいただき
ありがとうございます。
………………………………………

ここから、また…
最近の書き散らかし…
こんなこと書いてます
こちらへもどうぞ!