配慮と良心と。

Category : 追悼…
震災のほんの数日前、あるクライアントから
企業広告の提案を依頼される。
従来のテイストを踏んで、
まぁはっきり言えば媒体を選ばずに汎用性のある
広告を作って欲しいということ。
僕自身は過去にいくつか作ってきたので
その時はいつものノリで帰ってからゆっくりと考えようと…

そして大震災…

提出近くになってクライアントにメール。
情けない話だが、肝心のヘッドコピーが全く浮かんで来ない…
浮かんで来ないというよりも
広告そのもののあり方や目的、機能まで
思いを巡らせる始末。
要は希望に満ちた未来を切り拓く…というような…
そんなフレーズが出て来ない。
こんな事態に陥ったのはいわゆる“難しい仕事”とは違って
初めてのこと。
おかげで納期を延ばしてもらうも
昨日送ったデザインは自分でもなんだかなぁ…だった。

阪神淡路大震災の時に、結局のところデザイナーとして
何かをしようとしか考えていなかった自分が居た。
当然のように月日は経ち、僕自身は何もできなかった。
今回の依頼でそんなことを思い出す。
このことは今でも後悔している。

正直この業界、全く先が見えない。
広告にできること、なんて言うと
著名なデザイナー諸氏がチャリティーでポスター制作とか何とか
言いそうだが、やはり“その程度”のこと。
今まで時には片棒担ぎのように広告を作ってきた人間から見ると、
この仕事の無力さ、そして自分の小ささが思い知らされる。

アメリカの「ブルームバーグ・ビジネスウイーク」誌の
3月21日号の表紙は「ひび割れた日の丸」のデザイン。
在NY総領事館が「不適切」と抗議。

TKY201103250119-1.jpg

▲確かに苦痛の表情にも見える…

アートは作意と解釈のギャップがどうであれ、
落差があればあるほどに「問題作」として
それなりの存在価値を世に問い、作品に見いだすことはできるが、
何よりデザインは目的や機能が明確だ。

このように“シンボル”(こういう表現をするとまた文句を言う人も居るが)に
「負のカスタマイズ」とも呼べる加工をほどこすことには
アメリカは元来長けている国ではないだろうかと思う。
いわゆる「比喩的表現」、いや「揶揄的」か。
元々悪気も無いし、そうも感じられない。
ただ国旗を“いじる”ということの是非から話が始まると
日の丸そのもののあり方から史実にからみ、イデオロギーにまで話が突き進む、
とんでもない方向に行きそうな気配もあるので、
そうではなく表現の一環としての“処理”には僕などは理解する。
視覚から受ける速度がマッハ的だからだ。
しかし、そう、「配慮」である。
マスに乗った時の効果や衝撃や暗示なんてものは
デザインにとっては当たり前の技にしか過ぎない。
このデザインを発注し、検討し、決定した人間がいる限りは…。

これを見て、日本領事館が抗議にあたって
「日本自体が壊れた、ないし今回の危機で日本国民が
引き裂かれたことを表しているようにもみえる」と指摘し、
「大多数の日本国民を落胆させるものだ」という文言に
同感する人もそうでない人も当然居る。
その抗議の“根拠”はどこから、誰から、いつ発せられたものなのか。
つまり国民の総意、ということか。
何年か後の同誌の表紙に、その後の復興を数値的なデータから
デザインをグラフィカルに置換させて、
ほぼ日の丸は修復された、という方法だってあるはずである。
つまり傷ひとつない日の丸、いやちょっとの傷があった方が
せめてもの良心を反映させるかも知れない。

余談になるが、太平洋戦争当時、アメリカ兵は日本の国旗のことを
「ミートボール」と呼んでいたそうである。


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Comment

思考のすれ違い

表紙デザイン 今のわが国の状況を 端的に表現していると思います。

「配慮と良心」が根底にあったとしても 
受け手側の解釈で 発信側の意図する物が 全く違う物に変身すること多々。
個人レベルの些細なことから 国レベルに至るまで。
そのギャップを埋める努力は 必要なのか否か。
視座をちょっと変えれば 違う物に変化するのになぁ・・・
近視眼的な捉え方 したくないと思いますが 難しい。

領事館、抗議する前に することあるんじゃないかな。




to imari

日に日に恐ろしいデータを目にする度に
原因は地震にあるとはいえ、原発の問題は
もう日本のハナシ、ではなくなりました。

伝えることは確かに難しいのです。
誤解を承知で、という前提あっての論議というものもありますし、
その摩擦熱から生まれる新しい見識というものもあります。
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