そんなヤツおらんやろ…

Category : 浮世の「うっ!」
稽古を見ていて(というのは稽古を“し出した”のはごく最近だからであります)
演出家の指示の中によく出てくる言葉に「そんなヤツおらんわ」というのがある。
気がつくと、僕はこれが結構好きになっていたりする。

映画が面白くなくなったといわれる原因は
例えば映画のための書き下ろしではないものが多くなってきたこと。
これは小説を読んだ人が間違いなく、見なければよかった感に襲われる確率が
高いことを承知の上で映画を観てしまう軽率さにある。
どんな風にあのキャラクターを彼ないし彼女が演ずるかに焦点が当てられて、
結局そこにしか辿り着けなくなってたりする。
もうこの時点でアウト、なのに、なおさら好きな原作だったりすると
自分で自分を納得させてしまう。
で、対価の問題。
マンガに原作を借りて作った映画がマンガを越えたら
これは創造界の一大事なのだ。
「マンガとは異なるテイストで」とか
「原作にはないリアリティを」とか
もっともらしいことを言うが
これは本末転倒。

とどのつまりオリジナル脚本なんか書いても見合う対価にならないということ。
これではマンガの原作者も小説家も
末には映画化になることしか念頭にないという、
かくもうら寂しく、卑しい人に成り下がる一方。

「こんな人があなたの隣に居るかも知れません」風な
雰囲気を醸し出すような振りをしてみせるが
やはり「そんなヤツはおらん」のである。
それが映画なのだ。
「お前はそんなヤツ、そんなヤツと言うが
なぜ映画に現実に居そうな人間が必ず登場しなければならないんだ」という
お叱りの言葉もあるかと思う。
映画ファンにはこちらの意見が真っ当に聞こえると思う。
だから僕もそう思う事にした。

ありえないから楽しいんだ…と。
いや待てよ、そうだろうか…
有り得ない事を有り得る風に演出するのが映画なのだろうか…

進んで見るというよりも関西先行上映にほだされて見てしまった「阪急電車」。
エンターテイメントとして映画から縁遠くなったのは
ドキュメントばかり見ていたせいもある。(最近アップがご無沙汰になってますが)

ホームに立つウェディングドレスの女、中谷美紀は僕には気味悪く映る。
ここには阪急電車に乗らなければならない理由など要らないとでも
言わんばかりに彼女にとっての(不可思議な)必然しか描かれていない。
恋人に裏切られた女が式場で見せる陰湿な復讐も
それはそれで面白いが
その後に、あれだけプライドの高い女が
阪急電車にそのままの恰好で乗るかは解せない。
もっとも近くの席の婆様との会話で
「ここはいい所よ」と勧められた街に住んでしまう突飛さも
なんだかなぁ、である。
この時点で僕は興冷めする。
電車内で騒ぐオバはんに説教たれる先の婆様にも
これで観客は溜飲を下げただろうという、あざとさを見る。
正義や常識、良識を振りかざすには
車内というシチュエーションはしんどい。
多勢に向かう果敢な婆様、
後ろで拍手する大学生カップルという、そのものがすでに定型化している。

僕は小学校4年から現在のJRである国鉄で通学していた。
電車利用のべ回数は相当なものだろうと思う。
当時から客観的に「東京人は他人に対して無関心(を装う)」という
不文律を勝手に作っていたから、
あれは小5の頃のこと。
一緒に帰る電車内で養母が酔客にからまれた時の乗客の反応も
予想通りだった。
が、養父は違った。(まぁ自分のカミさんだから…)
彼はだいぶ離れた席に座っていたが最短距離で車内を疾走し、
酔客の襟首をつかんで、片方の手で相手の腕を後ろ手にねじ上げ、動きを封じ、
停車した駅のホームに引きずり出し、強烈な右ストレートをかまし、
文字通りボッコボコにし、
ドアが閉まる寸前で電車に乗り、悠然と元の席に戻った。
乗客の表情は…そう「おーやったぁ!」というよりも
恐怖感を車内に醸し出していたのだ。
僕はと言えば「すごいなぁ…」…ではなくて
「僕も時と場合によっては彼同様のペナルティを食らうかも知れない」という
乗客の気持ちがよく理解できる少年になっていたりした。

読み返してみると、このエピソードと映画の話とは
全く脈絡が無いとわかった。
まぁ、何にせよ、それほどにエキセントリックでもなく、
またそれほどにクールでもない、そこそこ閉じた個人が
目的地まで移動するツールとして電車があると考えれば
ありそうもない、居そうもない事や人は妙に鼻につく。
居ない人間を描くのではなく、
居そうな人間の“声なき声”を描いて欲しかった。
市井のひとたちは、普通に無視し、黙って同情し、うつむいて喝采するもの。
とばっちりは誰でもゴメンだ。

稽古場で耳にする「そんなヤツおらんわ」は
誰でも言う決め言葉にも思えるが
実はとても深い。


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