確かに震える菊を見た…「 吉田 重信   臨在の海 」

Category : 現代美術シッタカぶり
5月10日→5月22日【 立体ギャラリー射手座 】

吉田2

吉田1

ギャラリストの渡邉ひさのさんは言う。
「吉田さんの個展が最後で本当に良かった」

実は最後に、と要請したのはギャラリーサイド。
当初は違う作品の予定であった。
ギャラリー最後なら違うものにする、ということになる。
やっぱり作家さん(色々な意味で)だなぁ…

2009年4月に当ギャラリーで吉田氏は映像作品を発表している。
僕はブログを始めたばかりで
とにかく欲張って色々なカテゴリーにコメントしていた時期で
よく考えてみたら、その時の吉田氏の個展を見に来ていた。
これも小吹さんのブログで思い出したというわけで
失念していたということ。
誠に恥ずかしい限り…
渡邉さん、すいませんでした。

1958年福島県いわき市生まれの吉田氏は
その活動の殆どを関東でなさっている。
↓は「いわきトリエンナーレ」の代表でもある吉田氏のブログ
http://iwaki-art-triennale-2010.com/blog/cat/

いわき市は今回の地震に於いてはご承知の通り
深刻な“人災を被った”被災地と言える。
特に風評による被害というのは、口に戸は立てられないどころか
その波及の様相は生産者の憤りを伴うものだ。
単なる風評というよりも自主避難によって、流通のシステムがマヒしてしまい、
ついては入院患者や介護が必要な人が見捨てられているという現状は
政府の無能さの露呈以外の何物でもない。
石橋を叩いて渡ることは肝心だが
政府は石橋を叩いても渡ってはいけないと
むやみに言い放つだけで、無策も甚だしい。
情報はうまく伝わらないととんでもない化け物になる。
正確な情報とそうでない情報の区別、見極めを明確にする手立てが
今もって無いように見える。

ギャラリー内には入れない。
厳密に言うとドアを開けても身体半分しか入らない。
そこは白い波頭のごとくに1000本の菊がびっしりと敷き詰められた、
特有の花の香を漂わす海であった。
入り口にはいわき市の沿岸の砂を敷かれ、
子供の靴が何足か置かれている。
海の向こうの左手に赤い光が見える。

これを鎮魂と見るか、生者の向かうべき道のありかを示唆したものか、
あるいは菊の、そう日本人にとっての献花の意味するところに
焦点が当てられるかは鑑賞者の受けとめ方如何だが、
この暗い密室で、その無念に打ち震える花が
濃厚な香りと共に示す暗黙の声は、確かに聞こえるのだ。
哀しいが現実なのだ。

驚いたことがある。
滅多とブレることのないカメラ画像なのに
撮影したものは、なぜかほとんど“動いて”いる。
画像データを見た瞬間、あのフシギな感覚を思い出す。
入り口の戸を閉めた後に透明のガラスから覗く菊が
僕には小刻みに動いているように見えた。
見れば見る程、あちらこちらで細かく動くのをはっきり見たのだ。
しかしここでは空調も作動させてはいない。
引き戸を閉めれば完璧な地下の密室である。
僕には“その気”はどうやら薄いのであるが、
これほどに見えてくると、自分でも驚くほかない。
一体何か起きたのだろう。

もう一つの現実。
この花の意味はまた別な解釈をもってここに完結したように思える。
1969年にオープンした、京都屈指の老舗ギャラリーであった
ここが5月22日をもって閉廊。
思えば何十年前か、興味につられて三条通りの小さな入り口から
回り階段を降りていった時の“もぐり感”と
戸を開けた時の何とも言えない“一般的なるものへの拒否感”。
今思えばあれは現代美術の鎧に過剰に反応していた
自分自身の怯えだったのかも知れない。

当然作家諸氏には予め知らされていたであろうが
一介のファンである僕が内情を知る由もなく、
突然の閉廊の知らせにただただ驚くばかり。

懇意にしてくださったギャラリストの渡邉ひさのさん、
ここで出会った(これからもっともっと出会うであろうと思っていただけに…)多くの作家さん、
みなさんとまたどこかでお会いできることを願いつつ、
ここでのレポートは最後になりました…
皆様、お元気で。
そしてありがとうございました。


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