亡者と信者のピクニックが始まる…京都舞台芸術協会プロデュース公演「異邦人」

Category : パフォーマンス見聞
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作:山岡 徳貴子(魚灯)
演出:柳沼 昭徳(烏丸ストロークロック)
音楽:山崎 昭典
6月9日→6月12日【京都芸術センター・フリースペース】

「生き様」とよく言われるが、この様とは「ざまをみろ」のさま。
本来の言い方には無いものだと言われる。
言うなら「死に様」だ。
しかしこれは死んだ人を悪く言う表現になるとも言う。
僕は死に方や死に様(よう)と解釈しているから、その有様と捉えている。
だから悲観的な解釈というよりも
どう死にたいかというための言葉であるような気がするのだ。

ネットで集まった自殺志願者女性4人が現場で失敗。
或る納屋に辿り着いた一行とそれからの互いの危うさ。
理由はどうあれ、とにかく死ぬために集まっただけ、とは言え、
もっとも、その理由を話せば、たちどころに各自の高低差や温度差は
嫌が上にも比較されてしまうだろうが…。
しかし作者が語るように「人間なんて理由がないことの方が多いんじゃないか」。
理由の是非なんてどうでもいいことかも知れない。
ここでのミッションは死なのだから。

自殺を完遂すべく一人の首に手を掛けて殺す一人。
自ら死を選んではいるが、人の手に掛けられるのは意味が違うと対抗する二人。
そして納屋を祈りの場とし、人形を崇拝しながら死者の魂を呼び戻そうとする者たち。
死によって自己を完結させようとする者たちと亡者を引き戻そうと願う者たち。
しかし、4人は既に死んでいた。
 「何なんだろうね。死んでるんだよね、今。それでも楽にならないっていうのはさ。…ねえ」

ちょっと哀しい…あまりに寂しい…
成仏できてないということなのか…何なのか。
ではここに居るのは物の怪か、お化けか。
僕にとってはそれは魂の残滓か、この世への名残り惜しさに思える。
死んだ自分を改めて見て見よう。何にも変わっちゃいないじゃないか。
少なくともこの納屋の中では。
確信的に4人と上手につき合おうとしている、とても心根の優しい
アーちゃんと呼んでいた子供を亡くした母の言動は
ここでは至ってまともに思える。
なんといったって自分たちが呼び戻したんだから…。
「自殺なんかしちゃいけない。生きなきゃいけないんだ、僕たちは」と叫ぶ弟は
世間で言うところの良識ある人間のアイコンとして登場する。
その物言いが可笑しく聞こえるのは僕自身にも「自死する自由もまた人ならでは」なんて
思う節があるからか…

死んだ後のことを想像しながら人は死ぬものなのか。
私が死んだらどうなるんだろう…
子供も夫も居る女性。その矛盾にどうしても納得いかないアイコン。

リンクさせてもらっているブログにこんな一行。
「少なくとも人間は自然に死ぬきっかけをどんどん失っている」
先の震災のこととはまた別に、
日常的に別な“生かされ方”を強いられている人は必ず居るはずである。

舞台の上に納屋を作ろうとすると僕たちは完全な傍観者になる。
コの字の客席の周囲には、そう、夷川通りに確か専門店があったような、
様々な建具が並ぶ。これはすでに僕たちを内に引き入れた算段。
僕たちも亡霊のようにこの話を眺める。
通販で買ったという人形は高いのどうのと散々だ。
しかしご神体は物に変わりはない。
手を合わせば何でもご神体になる。それこそイワシのアタマでさえ。
要は“信じることができるか否か”
それだけだ。

奥に森が見えた時、心がざわめく。
なるほど…これで想像の舞台は倍にも3倍にもなるのだ。
照明もやりがいがある効果的な舞台美術。
朝の山のキレのある空気、夕方の不穏な空気もしっかりと感じとれた。

今思えばあのタイミングに感謝しなければいけないが
偶然にも「異邦人」の稽古見学の日は初の通し稽古だった。
決して広いとは言えないビルの一室で7人の役者が走り回る。
僕はダメ出しの前に帰ったから、検品の前に食べたようなものだったろう。
でも、本番のこの素晴らしい舞台美術の中にあっても
ビルの一室でも伝わることは伝わるものだ。
役者のポテンシャルと気迫。

おそらくは柳沼氏の脚本には登場することのないであろうペーソスを滲ませた亡者たち。
現実感というものを丁寧に洗い出し、少しずつ磨きながら
仕上げていく烏丸ストロークロックの手法からすると、
柳沼氏の初の他人の脚本による演出がとても興味深かった。

その亡者たちと目的を完遂させた信者たちとの鬼ごっこは
レンタカーと練炭とガムテープという三点セットからはなはだ縁遠い、
哀しいけれど楽しい幻夢、
そして山崎氏のナイロン弦がいつまでもエコーする。




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