Kさんへ。

Category : ロートル介護職員誕生
Kさんという83歳の男性。
迎えに行くといつもけわしい顔で
「どこ行くねん!」と奥さんにつっかかるも
「Kさーん、おはよう! 一緒に行こうね」
と手を降ると奥の居間から怪訝そうに歩いてくる。
行く前に必ずトイレをするも
2階からマンションのフロアへエレベーターで降りているうちに
「しまった…トイレ行ってないわ」
そこでフロアにあるトイレに行く。
オシッコが出るわけはないのだが…
僕が介護職を始めた2ヶ月前から
記憶のスパンが短くなり、もう1分と持たない時もある。
ディへの誘いに強い拒否を示す時などは顔つきも言動も豹変する。

この人、手が大きい。
なんでも中学時代にボート部だったそうで
(お父様は京大のボート部だそう)
ボートの話になると俄然ノッてくる。
帰宅願望も日々強くなってきた。
それも実際の自宅ではなく(これは認知の人には如実に表れる傾向)
また、ここが京都であることももう彼の中では認識されていない。
会う度に同じ会話で申し訳ないなと思うこともある。
しかし一番スムーズにコミュニケーションできる
せっかくの会話内容の成立を無下に否定することもないと思っている。
自慢話や好きな話題を不機嫌に語る人は居ない。
数少ない男性利用者の中でも僕は好きなおじいさんだった。
幸い、送迎で拒否されたということは一回もなかった。
タイミングが良かったのだろう。

そのKさんも昨日で最後の利用になった。
施設の入所が決まったのだ。
家では奥さんへの暴力もあったと聞く。
奥さんも苦渋の決断を迫られたようだ。
もしかしたら終の住処となるやもしれぬ施設。
しかし、それも不穏な行動や言動が続けば、その限りではない。
Kさんの行き場所、選択肢は増々限定されてくるだろう。

ディの利用者の殆どが認知症。
Kさんも短期的な記憶の喪失が表れては消える自身に戸惑っている。
認知症になった方は楽…そんな見方もできようが
実際はKさんのように“まだらになった自分”への暗澹たる思いを
抱えながら日々生きる人にとっては
永遠に見つけられない自分を探しに迷宮に迷い込んでしまった
不安な心持ちは僕たちには想像できまい。

Kさん、これからも元気で過ごしてください。

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