淡々とした「食」のアーカイブ…「いのちの食べ方」

Category : ドキュメントDVD
いのち

原題「Our Daily Bread」は聖書にある「私たちの日々の糧」。
監督は「この後に続くのは、主よ、私たちの罪をお許しください、だろうね」と言う。
一個のパンは労働対価によって、生きていくために得た必然だ。
ゆえにそれがルールを作り、モラルを形成してきたのだという教えでもある。
この生きていくための至ってシンプルな命題が、
経済軸を中心に回転する現代社会では、
過剰生産と破棄という「悪いサイクル」を「創造」してしまったのだ。
監督はインタビューで「BSEとか産地偽装とかじゃなくて、当たり前のように、単純に
“余った”から“捨てる”というしくみがおかしいんじゃないのかという疑問が
このドキュメンタリーを撮った動機。食料は昔に比べて破格な安さだ。
その原因を知りたかった」と言う。
これは「経済」の問題である。
大量生産で低コスト食品が出回り、当然、人々は買い求めるが
一人当たりが倍も3倍も食べるわけではない。
いや、もしかして家庭で保存できるということにも
原因があるのかも知れない。

この映画がいわゆるドキュメンタリーと違うのは
ある演出のもとで構成されているという点だ。
冒頭から幾度となく登場するシンメトリックなシーン。
ナレーションがない、音楽もない約1時間半。
あるのはシステマティックな工程と従業員のランチ風景。
が、カメラに向かって何を言うわけでもない。
従業員も監督から指示されているような気配が漂う。
これは現場で関わっている人間の “言葉” が
観る者の観念が走るような線路を
あらかじめ敷いてしまうことへの懸念からではないだろうか。
吹っ飛んでいくヒヨコたち、放出される牛へのえさ、
窮屈なほどの豚の移送…
ここまでは、笑えてしまうほどのやりきれなさだけで、
やがては食べられる者たちの「行く末」を案じることすら忘れる。
僕は、彼らがコンベアにのせられて、吊られて
最先端マシンが見事にかっさばく様子を見るにつけ、
この機械メーカーがいかに工場に売るべく、
いかに営業活動を行ったのかを想像してしまうのだ。
「えー、こうして上からスパッとスピーディーにカッターが入り
切り目も鮮やかに喉元まできれいにさばきます」とか
「この大きな円筒に牛を入れましたら、多少あばれますが
このピストル状のものを軽く額に当ててボタンを押せば
ほら、この通り! 女性でも簡単に秒殺です」とか…

工場で働く(この映画には多くの女性が登場する)彼らは
あえて感情を出さずに自分もマシンの一部になったように
リズミカルな動きで今日一日の労働を終える。
今夜には大好物のステーキや豚の丸焼きも食べるのだろうか。

いかに高効率な生産値をはじき出すかという「市場の課題」は
人間の英知(これも英知には違いない)を導き出し
機械文明の進歩によっていとも簡単に結果を出す。
ゆっくり考えているヒマなど無いのだ。
早回しのように生産し、早回しのように食べ、
早回しのように働き、そして…
特別なヒューマニストでなくても
片や餓死する子供の数が半端ではないことに
一人が食べて、出す量など知れているのに…と思う。
矛盾なき世界などあり得ないという絶望的な教訓と
誰でもない「人がそう欲し求めた結果」としての、これは
「いつでも、いつまでも世紀末」の様相を見せつけている。

「これは教育映画である。給食の前にみんなで見るというのは
どうだろう。これほど雄弁な「食育教材」はないんではないだろうか」
これはどなたかのコメント。実に言い得て妙。

そう、「豚のいた教室」の正反対にある
情緒を除湿したマクロ的なものとして。



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Comment

‘いのち’が‘商品’になっちゃあ、いけませんv-235 

できるだけ長く‘見栄えのいい商品’であるために、なまの‘いのち’を操作する。できるだけたくさんを、できるだけはやく、できるだけ長持ちするために、混みこみの環境で いろんなもの食べさせてる。

今の人間の子ども達が すぐにキレたり、とっても暴力的だったりするのは、‘食’という環境が原因なのではないかという方もおられます。

いやはや・・・・・。

→風さん

食の世界もクイック&レスポンス。
さっさと食べている。
作業のひとつなのかな。
「味わう」というキーワードを
もっと子供たちに認識させなきゃ
いけませんねぇ。
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