クソのような作品をバカに売りつける方法…「 イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ 」

Category : ドキュメントDVD
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監督:バンクシー

「明らかに現代アートというものは意図的に、
それを鑑賞する一般の人が(それを理解できない)自分のことを
能無しだと思うように仕掛けているからね。」(バンクシーのインタビューより)

今回のちょっと過激なタイトルはバンクシーが
最初にこの映画につけようとしたもの。
配給元は了承したが決してドキュメンタリーだとは言わないようにと釘をさされた。

バンクシーって誰だ?
それはグラフィティ・アーティストと呼ばれる、
いわゆる“常識的”観点から見れば、半社会的な行動力と美意識を
兼ね備えた彼らの世界を知らなければ当然の質問だろう。
今だからこそ、カウンターカルチャーがモノ言う時代なのかもしれない。
彼の行為そのものは「芸術テロ」と言われる。
要はカリスマである。
本名も年齢も明かさないバンクシーについては、
かまびすしい人達によって、あーだ、こーだと騒がれているが、
今だに推測の域は出ていない。
本名も年齢も明かさない彼の初監督作品は
第83回のアカデミー賞長編ドキュメント部門にノミネートされた。
当の本人はこの知らせをどう受け取ったろう。
一笑に付したかと思いきや、
インタビューでは「この映画は悪ふざけなんかじゃない。
最も誠実な映画の一例だと思っている。
撮影の過程で僕たちは映画を撮っていたことに気付いたんだ」と語る。
そう、見れば見る程、この映画の「可笑しみ」に虜になるのだ。

アートとは一体何か?
売れることとは何を意味するのものなのか?
何が人々を驚愕させるのか?
“過程を端折った或る男”がなぜマドンナのジャケットを依頼されるまでに至るのか?
一夜にしてスーパースターになれる国、アメリカの本質もまた、
あぶり出す劇的に面白いドキュメンタリーである。

古着屋のフランス人ティエリー・グエッタが
従兄弟のグラフィティ・アーティストに端を発して興味を持ち出し、
彼らに同行し、制作風景をビデオカメラにおさめていく。
危険を伴う高所への同行もいとわず、
おまけに機材の手伝いや見張りまでするようになる彼は
仲間うちで「ちょっと変なヤツ」として、その顔を知られることとなる。
しかし彼には映像作家としてのセンスは微塵もなかった。
編集した画像は確かにザッピングが延々続く様な気が滅入る代物。
愕然としたバンクシーは逆にこのフランス人を撮ることにする。
このグエッタという憎めない、のほほんとしたキャラの持ち主は
やがて、バンクシーでさえも予期せぬ展開を見せ始める。
アートについては当事者でないところが彼の明確なスタンスだった。
が、グエッタ自身がアーティストになってしまったのだ。
絶賛の中、ショーを取り仕切るグエッタだが、
段取りはグダグダで、多くのスタッフも「もう彼とは仕事はしたくない」と言う。
観客の中で唯一、正解だと思ったのが「犬のエサだね」という感想。
ここにはオリジナリティなんて無意味だ、と言わんばかりの作品が
大量に並び、驚くべきはどんどん売れていくという“現象”。

誰かがスゴいと言って会場に並べば、そこに居ない自分は
先のバンクシーの言葉ではないが、
イケてない自分を能無しだと思うだろう。
グラフィティ・アートと呼ばれるものは街に描かれることによってのみ
成立するものであって、部屋でゆっくりワインを飲みながら鑑賞するものでもない。
街という背景があってこそ、そして大っぴらに描けないからこそ、
そこに違法行為(これも評判となれば描かれた建築そのものに付加価値がつくのだが)が
あって、権力の行使があって、ぶっちゃけて言えば度胸や度量のような
ハクが付いて、皆が納得して崇める対象に成りうるのだ。
この映画は、よくあるグラフィティ・アートの賞賛や価値を
知らしめる目的とは幾分ズレた「とんでもエピソード」が、
ふんだんに盛り込まれた、最初から仕組まれたものか、と思う程に
出来過ぎているドキュメントフィルムだ。
配給元がドキュメントと明かすなと言うのも無理はない。

グエッタが「MBW」というアーティストとして活躍する過程には
単なる成功者の物語というのではなく相当な皮肉が込められている。
彼を偉大なインチキと見なすか、賞賛するバカとは鶏と卵の関係さと、
うそぶくかは勝手だが、ひとつ確実に言えるのは
これは監督、いやグラフィックの神様、
バンクシーが現代アートに抱く感情そのものであるということ。
MBWの姿を借りて恰好のアピールの場を自らが作ったのだ。

本当の価値って一体どこにあるんだ?
それとも価値は、価値があると伝播された瞬間から
本物の価値となるのか?

仮に「クソのような作品をバカに売りつける方法」と命名されたとしても
グエッタ、いやMBWは眉毛ひとつ動かさないだろう。
敬愛してやまない、あのバンクシーが撮ってくれたのだから…。

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