モラルリスクな象形美を絵筆に込めて…「 THE JAPANESE TATTOO PAINTINGS 高村 総二郎 」

Category : 現代美術シッタカぶり
2_20120507140905.jpg

4月24日→5月6日【 GALLERY MARONIE 】

子供の頃の楽しみの一つに休日の銭湯通いがあった。
休日は結構早い時間から開けていて、
からんころんと鳴る桶の音が
湯気と高い屋根の細長い窓からの西日の光に混じりながら…
ふと洗い場を見ると背中いっぱいに鯉を泳がせている
おじさんが黙々と洗っていたりする。
庶民の交流施設である銭湯に平然とその筋のお方が居るというのは
今では考えにくいが、当時はこのへんに鷹揚だったのかも知れない。
「倶利迦羅紋紋」
くりからもんもん、と読む。
元々は不動明王の変化身である倶利迦羅竜王の入れ墨のことだが
転じて入れ墨をした人のこともこう言うようになった。
入れ墨(これもおおまかな言い方なんですが呼び方のウンチクはともかく)をした
人をそれこそ幼少の頃から見慣れているせいか(花柳界に生家があったせいもあるが)
さほどの抵抗はない。

1_20120507141003.jpg

それにしてもモチーフの強烈さとこの妖艶な美しさよ。
人肌に墨を入れる。
それを日本画として描く。
作家である高村さんの中にはその時、どんな思惑がはたらいているのだろう。
それはまるで“入れ子”のように僕には見える。
確かに一面に入れ墨を施したそれを
抽象化したりポップに描くことは
この上なく失礼にあたるだろうと思う。
どんな世界に生きようと、である。

4_20120507141329.jpg
↑なんと脇の下も陰毛に覆われた部分にも施されている…

この絵を見る時に僕の中にはたらくものは何か。
その世界に生きる住人たちの“気合い”と同時に
“気負い”も、そしてこれほどの“芸術”を自らの肉体をカンバスにして
彫ることへのじわじわとしたリスクが
僕の眼底からひたひたと押し上がってくる。
遠い世界とは認識しているが、
じゃあ彼らと一生関わらないという保証などどこにもない。
僕が子供の頃に銭湯で見る彼らは
それこそ陽のあたる道をあるいちゃあいけない身分でござんす何者かの
陽炎か、幻影だったのかも知れない。
僕たちと彼らの浮世の間にあるものは
渡世人という特殊な種類の人間側からしか見ることのできない
深くて暗い川(なんだか歌詞だ)のようだ。
入れ墨、いや彫り物、刺青…どのような呼び方にせよ、
わかりやすい“アイコン”と視認するに
これほど強烈な手段を用いてまで耐えることに
いかほどの意味があるのか、残念ながら僕にはわからない。
もっとも相手さんにしたら、わかってたまるか!だろう。
これはとてつもない痛みを強いられる禁断の美しさであり、
それを望んだのも本人の選択であるから
もちろん先の数々の肉体的リスクも承知の助である。
10年から30年で肝硬変、さらに肝ガンに移行するといわれ、
MRI検査をすれば金属が含まれた染料によって発熱し火傷することがあり、
またきついアレルギー反応を示すこともある。
そして極めつけは生命保険への加入を断られること。
理由のひとつの「モラルリスク」。
社会的に健全でないという決定的な断定である。
これらの象形行為にはそれらの全てを含んだ上で
対極にある、他のどれでもない美しさが備わっている。
昨今のいただけないデザインのタトゥーとは質量ともに違う。

モデルさん(この言い方のギャップの妙)に
お礼として描いた絵を差し上げるという誠にわかりやすい構図。
経年して岩絵具が擦れてくると修正もされると言う。
なぜならバイトで来るモデルとはわけが違うからであろう。

これらの作品を
あちら側の未知なる領域を勝手な想像を膨らましながら見ていると
日本の持つ意匠力というものが、
こうした形、手法で今だに息づいていることに
改めて驚嘆せざるを得ない。
暗闇から浮かび上がる彼らの肉体は、やがて容赦なく老いる宿命をたどる。
もし旬というものがあるのなら、
今しか描けないのだろう。
そして自分では決して見る事のできない
背中を這う化身もそれを知っているのかのようである。

CIMG7644.jpg CIMG7645.jpg

CIMG7646.jpg CIMG7647.jpg


スポンサーサイト

Comment

非公開コメント

Trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

まとめtyaiました【モラルリスクな象形美を絵筆に込めて…「 THE JAPANESE TATTOO PAINTINGS 高村 総二郎 」 】

4月24日→5月6日【 GALLERY MARONIE 】子供の頃の楽しみの一つに休日の銭湯通いがあった。休日は結構早い時間から開けていて、からんころんと鳴る桶の音が湯気と高い屋根の細長い窓からの
58カ国語に翻訳
English
お越しいただきありがとうございます

den

………………………………………
アート・ドキュメント・ブック・
ミュージック・演劇・ダンス・
朗読・時事・ひがみ・そねみ・
やっかみ・おせっかい…
などなどシッタカぶって書きちらかしては
自己嫌悪な日々をゆらゆらと
過ごしております。
「シッタカブリアンの午睡」
「デラシネ光合成」をこのたび一本化。
言いたがり、やりたがり、ノリたがりな
のんのんとしたブログにお越しいただき
ありがとうございます。
………………………………………

ここから、また…
最近の書き散らかし…
こんなこと書いてます
こちらへもどうぞ!