自分自身からの自由とは(1)

Category : 浮世の「うっ!」
僕は夕食をとりながら(いや、酒を呑みながら、だな)新聞を広げて
隅から隅まで読むという、あまりよろしくない習慣がある(そうだ)
本人は全く頓着していないのだが、
来客時やよそへ行った時についやってしまいそうで、
これは数ある留意せねばならない事項のひとつではある。
つまりマナーがなってない、ということ。

さて、こんな書き出しで始まる夕刊の特集記事。

「生かされるのは嫌」自ら“その時”決める

思わず箸を持つ手が止まる。

「人は生かされている」よく聞かれる言葉。
齢を重ねると、この意味がわかってくる。
僕などはこの言葉を裏付ける体験などしていないが、
感覚として、そう、わかる。
大概、人に迷惑をかけているから。
自分が人さまによって生かされていることがわかることの方が
自分の人生にとって限りなく良いと考える(年齢になった)
しかし記事の見出しにある「生かされる」という表現は
厳密には「治療によって生かされ続ける」ということで、
宗教、人道、倫理(実はどれも手ごわくてやっかいだ)
照らしてモノ言うことは、抹香臭さを我慢すれば誰にでも諭すような話ができるかもしれない。
しかし、この“要求”や“願望”をすんなり受け入れるほど社会は
成熟していない。

この見出しを読んで、当事者にけしからんと怒る人は
“とりあえず”は正解で真っ当な認識の持ち主とされるのだろうが、
死刑の存続か廃止の問題にも似て、
結局のところ、そう語る当人にしかわからない状況が厳然とある。
ケース・バイ・ケースというのともちょっと違う。
他人の死を語り、考えることは同時に自分の死について考えることだ。
病気や事故は意向とは関わり無く
非情なほどに誰の身の上にも降り掛かる可能性を否定しない。
「…たら」や「…れば」は無念さにさらなる重い石を沈めるような
暗澹さしかもたらさない。
確かに人情ではあるけれど…。

「愛する夫や妻、子どもが治る見込みのない病気で毎日毎日、
朝から晩まで苦しみ続けていたら、あなたはどうしますか?」


記事の本文はこんな書き出しで始まる。
英国に住むデビー・パーディという50歳の女性。
20年近くも免疫系の難病に苦しんでいる。
病状は進み、治る見込みは無い。
「生き続けることが不可能ならば自ら『その時』を選びたい」と彼女は訴える。
さて誰がこの問いに真正面から答えられるだろうか。
生きるということは同じだけ苦しむということである、などと書くと
お坊さんの説教にも聞こえる。
しかしデビーのそれは痛烈な痛みを抑える鎮痛剤の
また強烈な副作用にも苦しむという健常者の想像を遥かに越えた
状況の経験によるリアルな“苦しみ”である。
人の痛みなんて爪の垢ほどもわかるはずはないのだ。

「死ぬ恐怖よりも痛みの方がつらい(中略)生かされるのは嫌なの」と
語るデビーは尊厳死が認められているスイスで最期を迎えたいと思っている。
英国の法律では彼女の目的に沿って、渡航や入院の手続きを手伝い、
付き添った人間も自殺ほう助罪に問われて最高で禁固14年という刑が課せられる。
そこでデビーは自分の死後に夫が訴追されないように
事前の免責保証を求めて提訴した。
これはイギリス社会に大きな波紋を呼んだ。
現在、尊厳死が合法であるのはスイス、オランダである。
デビーもスイスで最期を迎えたいと思い、施設を見つける。
もっと病状が軽かったころには一人でも渡航できたが
現在では介助が必要で、夫に連れていってもらったら彼が罪に問われる。
「彼を巻き込みたくない。でも一人では行けないの」
デビーは検察に対して付き添いの夫を訴追しないように求める訴訟を起こす。

2009年7月に最高裁に相当する上院上訴委員会は
「すべての人が自分の人生を尊重する権利がある。
最期をどう過ごすかは本人の意志が尊重されなければならない」として
検察に訴追する場合の指針の明確化を求めた。
これを受けて検察は尊厳死を手助けする際の
動機を最重要視するとした指針を発表した(新聞より)

デビーはこの発表を受けて「人生を取り戻せたように思う」と語った。
しかし夫は「縛り付けてでも行かせたくない。
そんな時のことを想像したくもない」と言う。

(続く)

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