冨士山アネット [ 八 ] JAPAN TOUR 2012

Category : パフォーマンス見聞
ロールシャッハ


作・演出・振付:長谷川 寧
2012.7.14→7.15【 伊丹アイホール 】

まさに八面六臂の活躍と言っても過言でないほど多忙を極めている
長谷川さんの真骨頂を観た思い。
ダンス的演劇(テアタータンツ)を提唱しているそのスタイルは
セリフのないダンスながらきちんと台本があり、ト書きあり、
読み合わせをして、ダメを出すという演劇の手順を踏みながら作られている。
よく身体言語というけれど、初めに言葉ありき、というのは
全体のストーリーを設定するためのものではなく
セリフがあることで、そして最後にセリフを無くすことで
より身体から立体的に立ち上らせるということではないか。
ダンスは言葉なきパフォーマンスでもなければ
動きで言葉の代替をすることでもないということが
なんとなくだがわかるような気がする。

心理療法士と婚約者、作家、アシスタント、患者といった役柄が
渾然一体となって舞台を構成する。
まさに駆け巡るという表現があてはまる疾走感と
決してアクロバティックになりすぎず、それでいて洗練された動きが
一瞬の休む間もなく展開される。
観客が互いに向き合う形の挟み舞台は
やはりあちらとこちらで見る対象が逆になるわけで
面白いのは、公演の半券提示で半額で反対側から見られるという趣向。

長谷川さんのセンスは音楽のみならず(これがまた実に素敵なのだが)
ビジュアルにもふんだんに反映されていて
フライヤーは言うに及ばず、コスチューム、舞台装置なども
大胆でありながらも微に入り細にわたり長谷川イズムがうかがえる。
以前参加したワークショップ&ショーイングで驚いたのが
現場(小屋)の道具や備品といったものを余す事なく使いながら
一つの舞台を作り上げたことだ。
ワークショップ&ショーイングは東京(アトリエフォンテーヌ)、
京都(アトリエ劇研)、福岡(枝光本町商店街アイアンシアター)で
同じテーマ「悪夢」を素材に行われ、6月の福岡演劇フェスティバルの
大トリとしてブラッシュアップの後上演された。

長谷川さんは俳優として10年以上のキャリアをもつ一方で
多くの振付けもされている。
もちろん冨士山アネットとしてダンスもされる。
第一印象は華奢な感じだったが
冨士山アネットの独特なパフォーマンスを見るにつけ、
ご自身のインナーマッスルは相当なものと察する。
独特な、というのは多分ダンス全般に言えることだと思うのだが
ソロよりも“絡み”合うその一瞬のフォルムが実にきれいでシャープなのだ。
絵になる、というのか…。
まるでアポエラを見ているかのように流麗で澱みがない。

途中、舞台に落ちてくる半透明の黒いスクリーンに映写される
数字を出演者がまるで黒板に書いているように演出された部分も
挟み舞台ならではの効果が全面に出ていて
まるでインスタレーションである。
と思ったところで、ダンスとは身体をモチーフにした
インスタレーションではないか、とシッタカぶる。

今回は monochromecircus の坂本公成さんとのアフタートーク。
坂本さんも言っていた「相似形」「シンメトリカル」なコンセプトが
ビジュアルも含めて効果的に使われていた。
心理療法士が用いるロールシャッハが、それこそ
「あなたには何に見えますか?」という今回のショルダーフレーズを暗示し、
陰と陽、正と負、+と−、表と裏という対比をダンスを通して現し、
或るリピートされるダンスの動きを経て、
見てる間に作家と心理療法士がいつの間にか入れ替わるという
可笑し味、皮肉さも今回の見所の一つであると思う。
気になる石があったら、引き返してでも触る、と言う
長谷川さんの執着もまた、丁寧に重ねたレイヤーのような
冨士山アネットの独自性を際立たせている。

当日の案内の「eight」サポートメンバーに
僕の名前があることにも驚いた。
長谷川さんは誠に以て律儀な方である。




スポンサーサイト

Comment

非公開コメント

58カ国語に翻訳
English
お越しいただきありがとうございます

den

………………………………………
アート・ドキュメント・ブック・
ミュージック・演劇・ダンス・
朗読・時事・ひがみ・そねみ・
やっかみ・おせっかい…
などなどシッタカぶって書きちらかしては
自己嫌悪な日々をゆらゆらと
過ごしております。
「シッタカブリアンの午睡」
「デラシネ光合成」をこのたび一本化。
言いたがり、やりたがり、ノリたがりな
のんのんとしたブログにお越しいただき
ありがとうございます。
………………………………………

ここから、また…
最近の書き散らかし…
こんなこと書いてます
こちらへもどうぞ!