期間限定の制服という着ぐるみ…「今井久美写真展 カムフラージュ」

Category : 現代美術シッタカぶり
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制服メイン

3.24→3.29【アートスペース虹】

制服を着た女子高生の正面きった立ちポーズ。
カメラの前で無防備な彼女たちのポートレート。
切り取られた風景でもなく、物言わぬ静物でもない
そこには「至って普通」の自分の通う高校の制服を着た
女子高生たちが居るだけ。
制服の女子学生ほどステレオタイプなものはない。

作者は、皆自分の好きな服を選んで着ている中で
制服の女子高生が特別浮き立って見える、とある。
「自分を覆い隠すもの」として制服を捉えている。
個性的であることが魅力的なはずなのに没個性の象徴のような
制服を着ていることは自分を覆い隠そうと「逃げ道」を用意していることで
世間の大人もこれと大差ないのではないか…という作者側の視点。
すでにここで作者と違う電車に乗ってしまったらそれっきりだ。
これは作者の個人的な洞察と自らの体験によってのみ成立する写真だ。

この撮影者がどのような意図でシャッターを切ったか、
などということはどうでもいいこと。
なぜなら写真は現像(今は違うか)されて
大気に触れた瞬間、残酷でもあり、美しくもあり、
悲しくもあり、楽しくもある「結末」となるからだ。
だから見る者は自分の経験値や年齢や性差によって
さまざまな反応を呼び起こし、その平面を理解し、認知するのだ。
僕にとってはこの何枚かのパネルは
取説付きの大きなアルバムのようにしか見えない。
街で女子高生を正面からまじまじ見ることなど無い、どころか
ヘタをすれば通報されて変態扱いである。
これは「萠え」でも「フェチ」でもなく
過去に「制服を着ていた」事実への自己批判を表したものであろう。

正面切ってこちらを見据える女子高生たちの
まぎれも無く、そこにあるのは熟達したアレンジ力と個性的な演出と
ここが最も肝心なのだが、
今しか着られないという “ 特権的な若さの発露 ” だ。

酒井順子の「ど制服(朝日新聞社刊)」というエッセイがある。
小・中・高校生をはじめとする制服について考察した軽い一冊である。
ここに中々的を突いた一節があるので紹介したい。

高校生の制服は「とっくに肉体が成熟している」という事実を高校生本人にもそして世間の人たちにも気づかせないようにするために“封印”とならなければなりません。(中略)もしも制服など存在していなかったら、高校生達は勝手に派手な服装をするかもしれません。しかし、それはイクラとウニを一緒に食べるようなもの。お互いの濃厚さでお互いの魅力を相殺してしまい、かえって「高校生である」という持ち味は消えてしまうのです。(中略)
そして当の高校生達は大人より先に、その事実を知ったのです。「この地味な制服をうまく利用することによって、私達の価値を吊り上げることができるのだ!」…と。地味な制服は炊きたての真っ白なご飯のようなもの。そのご飯の上に、つやつや光るイクラをのせたらどんなにおいしそうに見えることか…。その瞬間から高校生達は制服を自分達の味方につけました。

それにしても、展示会場でのこの気詰まりは何なのか…

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Comment

「制服を利用して価値を吊り上げる」
新鮮な発想です、高校時代をジーパンとTシャツで通した私にとっては。やっぱり集団全員が同じ服を着る・着せられるというのは、不自然かつ恐怖です。 さらに、今まで一度も‘制服’というものを着たことがないわが子にとっては、どんなふうに写っているのか。興味アリ。 

酒井氏の一文腹にストンと落ちました。
酒井氏と私の母校は制服無しの お嬢さん校です。6年間そこにいると 制服に対し ある種の「憧れ」を禁じえないのです。「イクラとウニ」という表現 よ~く分かります。正に言いえて妙です。地味な制服が羨ましく その封印がほしかった。二度と 入手できない一時期の封印が。個性とか自由の尊重ナンボのもんじゃい。自分を消す封印の方が よっぽど奥が深いと思うのですが。

→風さん

息子は私服でしたが、
けばい恰好した子はほとんどいませんでしたねぇ。
そんな毎日キメてたら疲れますからねぇ。
ファッションにしても淘汰されてくるから
とても落ち着いてました、みんな…
かえって制服の方がくずれまくってます。
だらしない、というか…

→伊万里さま

制服がカワイイ高校なんていう特集雑誌が
注目される昨今、まぎれもなく、これは
彼女たちの最重要なファクターのひとつです。
「少しだけ人と違うこと」を表現するのには
制服はうってつけの「道具」です。
そして制服によって当然「学校ブランド」が
認知されるという事実もあります。
でも、もうちょっと小ぎれいに着てほしいもの…
という気もします。
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