人の手が触れた温もりを漂わす/ 三橋 遵 − 染 立体 − 」

Category : 現代美術シッタカぶり
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2012. 9月15日→ 9月23日【 楽空間 祗をん小西 】

本に目を通さない日は無いシッタカ。
が、この本読み男はことごとく忘れる。
これもあれも何冊かを平行読みしているせいであることは明白だ。
海馬のへたり具合に準じた読み方をすべきところ、
この男が間違っているのはそれだけではない。
ところどころ同じ本がかぶっている本棚。
我ながら小さなため息が出る。

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観光客がさんざめく花見小路四条を下がったところにある
風情あるギャラリーに足を踏み入れた途端に
すでにあなたは三橋さんの世界に取り込まれてしまっている。
本を素材に作品を発表する作家さんは
一度解体したり組み直したりと
どちらかというと書籍の構造や大切な要素である活字に焦点を当てたり、
また本の機能的な部分を作家なりに抽出したものが多い中で
三橋さんは本そのものが持つ、というか放つ匂いを彷彿とさせる。
三橋さんのことを紹介しているサイトがあった。
興味深いのはロウケツ染めから出発した氏が
繊細で優美な色彩感覚を持つ生来の持ち味を除いて、
染色作家というイメージを早い時期に軽々と超えてしまったというくだりである。
そう、元来の染色作家としての作品も当然ながらギャラリーにはあるのだが
この展覧会そのものは造形ともインスタレーションとも
彫刻ともミクストメディアとも呼べる何とも言い様のない作品で、
ましてや本そのものは売られていたもの、そのものに多少手を加えながら、
本を取り巻くように三橋さんがインスパイアされた絶妙な
“施し”が与えられているのである。
中の間というのだろうか、広い畳敷きの部屋に
大きな板が据えられ、その上に三橋宇宙とも呼べる作品が
僕たちの目を虫に変えてしまう。
三橋さんの作品を見ているとどれもが一定の温度で保たれている。
だから見ていて安心する。
それぞれの本に挟まれた柔らかく細い付箋たちは
言霊の余韻や谺(こだま)を染み込ませているリトマス紙のようで
本というものが、どれほど人々を豊かにし、
提起し、投げかけてきたかと目の当たりにする思いがするのだ。

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↑最初の作品になった「言海」文庫版。一番厚かったのがこれだそう。


本は閉じた宇宙だ。
開いてみなければ絶対にわからない。
物理的に特別に巨大である本を除けば
どれもが持って歩けてどこでもその宇宙に一瞬でワープできる。
想いを巡らす、これは本にこそぴったりなフレーズだ。
スピン(栞ひも)は旅した読者の軌跡であり、
未知なる世界への道しるべだ。

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本好きにはたまらない個展だった。
かなり遅れての見聞記となったが、
シッタカと同じ歳の三橋さんにもこの場を借りておわびしたい。
ともあれ三橋さんの遊び心に富んだこの連作に
しばしシッタカの邪気もなりを潜めた。



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