自分の断面の際に立ちながら深い渕を覗く/ through '12 〜 まいた種は自分で刈らねばいけない 鷲津 民子 installation 」

Category : 現代美術シッタカぶり
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2012. 9月25日→ 9月30日【 GALLERY SUZUKI 】

開くのを待った感じでギャラリーの扉を押すと、
手入れの行き届いた、丁寧で淑やかで
上品な空間が目の前に現れた。
ほどなく作家である鷲津さんが来られてしばしお話させていただく。

亡くなられたギャラリーオーナーの鈴木淑子さんの話題が出たところで
なんでも鷲津さんのご自宅へ行かれた淑子さんが
自作のオブジェをご覧になって、今度の個展に是非とリクエストされたとか。
それが今回の展覧会となり、結果的には淑子さんが目にすることは
残念ながら叶わなかったが、鷲津さんにとっては感慨深い個展になったと思う。

鷲津さんと言えば、先が折れた円柱の立体作品が知られる。
円柱を60度の角度で切ったものが180度回転された上部を持つ作品で、
仰ぎ見るように何本もの円柱が屹立している。
この60度に傾いだ形が鷲津さんの心を捉えた。
鷲津さんにとって格別に快い造形なのだ。
どう快いかという、それを説明できないから作品として表すわけだが、
或る形に心が捕われるってどんな感じなのだろうか。
時々作家さんのアタマん中を覗いてみたい衝動にかられる。

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↑「まいた種は自分で刈らねばならない」種子は旅人。

白いスチールの箱の中にまるでスイーツのように並べられた様々な種子。
石膏に少しだけ埋められたその種子たちはいろんな場所から
鷲津さんの元へ運ばれてきた、
“何かの始まり”を象徴させ、その声なきメッセージを送り届ける季節の旅人だ。
この幾つもの石膏は同じものを大量に作ったのではなく、
表面に僅かのうねりがあって、並べた時に決して標本にはならぬように
種子を優しく迎え入れるようなしつらえになっている。
足が付いた大きな箱の底はスチールの質感がそぐわないために
わざわざ立方体と同じ石膏を敷いたというから念がいってる。
これは目に見える、見えないの判断基準ではなく、
気持ちの中でオトシマエをつける部分なのだろう。
それほどに大切に作られたのだ。
カフェの中央に鎮座してもこれは様になりますねぇ、なんて
鷲津さんと話した。

かの円柱のような、或る法則性のある形を通して作家の観念と
鑑賞者の抱いている感覚が互いにフィードバックしながら
増幅していくといった作品ではなく、
誤解を承知で申せば、とても「可憐」な印象が強い小品たちである。
が、ここに鷲津さん自身の等身大の、日常の姿がある。
一見ポエティックであるが、決して口当りがいいわけではない。
ここにある作品は鷲津さんが生きてこられた上で
実感としての“ささやかな”人生観が反映されている。
それは自分の断面に立ちながら深い渕を覗く様なものだ。
年齢を重ねれば重ねるほどに消化される部分と
そうでない部分とがせめぎあう。
自分に正直に生きにくい世の中であることは確かであるが、
情に竿さして流されても案外と浅瀬に足がついて、
そこに美しいせせらぎを見ることも出来よう。

どの作品にも見られる凛とした佇まいと
楚々としていて尚、心に静かに降りて来るような柔らかな表情。
この居心地の良さは
ギャラリーのサイズを徹底的に考慮に入れて
作品のレイアウトを長時間かかって決めたという裏話に確かに通じる。

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↑「行間を読む」人生における行間は読めているだろうか。
 心は深く そして透明にされているだろうか。


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↑「As you sow.」まだない未来・これからある未来・見ること・触れること・遠ざけること・近づけること

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↑「正しい家」刻印・ここ そして いま

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↑「やわらかな家」生きていくなかで 自分を守るもの。それに辿りついたのか、そして慈しんで受け入れられたのか。

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↑「祝福を受ける」誰かを愛した記憶・愛された記憶 かけがえのない存在を 温かい体温で包む。

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※作品に添えられた一文は鷲津さんのステートメントより掲載いたしました。




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